(右から)
在カタール日本国大使館 特命全権大使 前田哲
独立行政法人国立病院機構 千葉東病院院長 西村元伸
フットボールアナリスト 田村修一
きっかけは前田が2021年にカタール大使に就任したことだった。カタールでは現在、サッカーのワールドカップが開催されている。大会を取材する田村が、期間中に食事でもできればと連絡をとったところ、帰国中だった前田とかつての麻雀仲間が集うことに。教室ではもちろん、お互いの家を行き来して卓を囲んだ4人は、40年以上の隔たりを経て再会したのだった。
母校の県立千葉高は、旧制中学時代の伝統が残る校風で知られるが、同時に自由放任であり、制約もほとんどなかった。受験指導もなし。結果、クラスの大半が浪人するというまったく自由な校風であった。
堅実でバランスの取れた雀風の西村は、4人の中でただひとり現役合格を果たし、千葉大学医学部に進んだ。内科医となった現在は、千葉東病院の院長を務める。糖尿病専門医としても第一線で活躍している。
理詰めな打牌の前田は、一浪の後に東京大学法学部に進み、防衛庁(当時)に入庁。菅直人・野田佳彦内閣では、防衛省出身者として初の内閣総理大臣秘書官を務めるなど、内閣官房で役職を歴任した。
奔放な打ち筋の現田茂夫(写真撮影は欠席)は指揮者を目指し、やはり浪人の後に東京音楽大学に進学、その後、東京藝術大学に進んだ。神奈川フィルハーモニー管弦楽団での活動が長く、オペラでも妻であった故・佐藤しのぶとの共演など、今日まで続く精力的な公演を行っている。
意志の麻雀を志向した田村は、二浪の後に早稲田大学政経学部に入学。大学院進学の後にスポーツジャーナリズムの世界に転身。主戦場はサッカーで、日本唯一のバロンドール(世界最優秀選手賞)投票委員でもある。
四者四様。個性も方向性もまったく異なる4人が、高校時代に卓を囲んだがゆえに長いときを経て再び互いの道を交錯させる。人生の実相とはそんなものなのだろう。(田村)
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source : 文藝春秋 2023年1月号