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文藝春秋 創刊100周年新年特大号は完全保存版です

編集長ニュースレター vol.2

新谷 学 文藝春秋総局長
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 いつも「文藝春秋」をご愛読いただき、ありがとうございます。

 編集長の新谷学です。

 これから毎週、「文藝春秋 電子版」の会員の皆さまに最新号の読みどころ、取材秘話などをお伝えしていきます。

 さて、「文藝春秋」創刊100周年新年特大号は、紙版だと680ページ超、3センチ近いボリュームですから、読み応え十分の完全保存版です。

 中でも真っ先に読んでいただきたいのが、保阪正康さんの「平成の天皇皇后両陛下大いに語る」です。

 保阪さんは、今は亡き半藤一利さんとともに、2013年2月から2016年6月にかけて、計6回にわたり御所で天皇皇后時代の両陛下と懇談しています。

 保阪さんはその極めて貴重な記録を公開する理由をこう記しています。

〈平成の御代が終わろうとする時期に、両陛下がどのようなことに関心を持たれ、どのような話をされたのか。そのことは記録しておくべきだろう。〉

〈最近、三十代、四十代の研究者の書を読むたびに、悪しき資料主義に走り、当事者の肉声がほとんど生かされていないことに危機感を感じていた。肉声を尊重してきた在野の研究者の一人として、後世の役に立つものになればとの思いはひときわ強い。〉

 この〈当事者の肉声〉こそ、「文藝春秋」が創刊以来もっとも大切にしてきた編集方針であり、それは皇室を取り上げる場合でも変わりません。

 一例を挙げれば、1949年6月号に掲載された「天皇陛下大いに笑う」は、「文藝春秋」が国民雑誌として評価される契機となった記事です。フランス文学者の辰野隆、人気タレントの徳川夢声、作詞家のサトウハチローの三氏が昭和天皇との懇談の様子を誌上で再現したものですが、天皇陛下の親しみやすい姿を広く国民に伝えています。

 では、平成の天皇皇后両陛下は保阪さん、半藤さんに何をお話しになったのか。

 話題は満洲事変、石原莞爾からエリザベス女王まで、多岐にわたりますが、お二人が初めて出会った「テニスコートの恋」のくだりを少しだけご紹介しましょう。

〈陛下は美智子さまに「その時あなたはどういう気持ちだったんですか」と聞く。すると美智子さまは「私はもう殿下とテニスをすると言われてすごく緊張していましたよ」と答えた。〉

 今回の記事は、もともと編集部から強くお願いしたことがきっかけですが、その際の保阪さんの言葉が強く印象に残っています。

「確かに、象徴天皇制の在り方、国民と皇室との関係を見直さなければならないこの時期に、『人間天皇』の実像を伝えることには意義があると思う」

 ぜひじっくりとお読みいただき、ご感想をお寄せください。

文藝春秋編集長 新谷学

source : 文藝春秋

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