最近、南西諸島や東シナ海では日米共同訓練が頻繁に行われ、その中で陸自の領域横断作戦と米海兵隊の機動展開前進基地作戦の連携向上を図る訓練を行っている。まさに台湾有事が現実的な危機として目前に迫っている証左である。
中国は昨年10月に開催された共産党大会で、習近平総書記が異例の3期目に入ることを認めた。習近平は台湾の統一について「武力行使を決して放棄しない。あらゆる選択肢を持ち続ける」と宣言している。
中国の台湾侵攻の判断基準について米国防関係者は次の様に考えている。1、台湾が独立を宣言した時。2、台湾が明確に独立に向かう動きを示した時。3、台湾内部が混乱した時。4、台湾が核武装の動きをした時。5、台湾への外国勢力の介入・外国軍が進駐する時。
はたしてそれだけであろうか。中国の内政面からも考えられる。経済状況等が悪化し、それまで耐えてきた国民の不満が臨界点に達し、その矛先が共産党政権に向う場合には、政権基盤を確固たるものにするために台湾への武力行使を決断する可能性がある。その時期は習近平の4期目、人民解放軍の強軍化目標完成の2027年頃ではないかと言われている。また米軍関係者はその時期はさらに早まるのではないかと分析している。
台湾有事が日本に波及するのはどの様な場合なのだろうか。1、中国軍の尖閣諸島や先島諸島への限定侵攻がある場合、2、存立危機事態から武力攻撃事態へと事態が推移する場合、3、台湾軍の航空機・艦艇が日本へ避難することから波及する場合が考えられる。
その時、日本の防衛態勢は大丈夫なのか。岸田首相は「防衛力の抜本的強化」を明言し、昨年末に安保関連3文書を改定した。新たな国家防衛戦略に基づき、自衛隊の防衛能力を高め、日米の共同作戦能力を深化させることは当然だが、これにQUADの豪、印、さらにはAUKUSの英国を加えた国際的な安全保障の枠組みを強化することが必要である。自衛隊は米豪以外に、英・独・仏軍との共同訓練を段階的だが深化してきている。そして、中国に対し、台湾侵攻は国際社会の激しい反発と制裁を招き、計り知れない破壊を生むことを自覚させ、思いとどまらせる外交努力が必要である。
それでも台湾有事が発生した場合には、国民を守る政府・政治家の強い指導力が必要になる。
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source : 文藝春秋 2023年2月号