読売巨人軍にとって5年ぶりのBクラス、4位に沈んだ昨シーズンは、屈辱的な1年だった。
投手陣では、新人の大勢が抑えの切り札として目覚ましい活躍をみせたが、チーム防御率はリーグワースト。打線は4番の岡本和真の不調に加え、主軸の坂本勇人の3度にわたる故障による離脱が大きく響いた。
さらに追い打ちをかけたのが、坂本の女性スキャンダルだった。
昨年9月、文春オンラインが報じた元交際相手との妊娠中絶トラブルについて、球団側はすでに当事者間で代理人を介した示談が成立していると回答。坂本もトラブルについては口を噤(つぐ)み、推定年俸6億円で現状維持のまま契約更改した。だが坂本の女性に対する赤裸々な言動は、世間に嫌悪感を植え付け、巨人軍の“ブランドイメージ”の失墜を招いた。
その批判の矢面に立たされているのが、球団史上最長の通算17年目を迎える原辰徳監督である。チーム編成まで掌握する全権監督となり、長期政権の弊害が指摘されるが、むしろそれは巨人軍が抱える宿痾と言ってもいいかもしれない。
私は2016年に、複数の巨人選手が関わっていた野球賭博事件を入り口に、巨人軍を巡る数々の不祥事とその構造的な問題について、自著『巨人軍「闇」の深層』に記した。
巨人の歴史を紐解くと、その組織運営の転機となったのが1978年の“江川事件”である。江川卓投手の巨人入りを巡り、野球協約の盲点を突いた“空白の一日”という奇策を繰り出し、他球団からの猛反発を受けつつも、横紙破りを押し通した。この時、事後処理に関わった1人が、現在の読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡邉恒雄氏である。渡邉氏はその後、89年に「巨人軍最高経営会議」のメンバーとなり、やがて巨人軍オーナーに上り詰めていく。
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source : 文藝春秋 2023年2月号