世界のデジタル関連産業、特にインターネット関連産業で、アメリカが断然強い。それは日本のデジタル敗戦といってもいいような状況である。その象徴が、「GAFA」と呼ばれるアメリカのインターネット関連企業。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、の略である。
彼らは、インターネットのプラットフォーム分野(インターネットを使う基礎的なシステムや機器・サービスの提供)では圧倒的な存在で、デジタル独占といってもいいような状況になっている。
この分野で日本がここまで徹底的に立ち遅れた背景には、いくつかの厳しい構造的理由がある。その最大の要因は、インターネットソフト人材の供給劣位である。日本のデジタル産業が雇用できるコンピュータサイエンス人材、それも日米の大学からの人材供給量が、あまりにも違うのである。もちろん、日本が圧倒的に少ない。
たとえば、アメリカのコンピュータサイエンス分野の大学の修士卒業生数を日本のそれと比較すると、2015年時点でアメリカ3万人強に対して、日本は3000人強。日本はアメリカの10分の1なのである。しかも、10分の1という大きな格差がもう30年近く続いている。その累積格差は巨大である。つまり、この分野で日本が国際的に戦おうにも、“兵隊さん”の数でアメリカに圧倒されているのである。
だから、コンピュータサイエンスの基礎能力が決め手となるデジタルプラットフォーム分野で、日本がアメリカと正面から戦う戦略はそもそも成立しない。むしろこれからの日本企業は、これだけデジタルプラットフォームが世界中に普及したことを逆手にとって、プラットフォーム利用戦略で強みを活かして戦うべきである。そうすれば、日本にも十分に勝機がある。
これだけデジタルプラットフォームが社会の中に浸透してくると、それを活かしたデジタル関連産業のすそ野も広くなる。その広いすそ野の中には、大学でコンピュータサイエンス教育を受けた人間だけでなく、さまざまな技術、能力、熟練の技を持った人々が活躍できる分野が多数あるだろう。そこを日本は狙うのである。
その基本戦略は、人間くさいデジタルシステムやサービスを目指すという方向性。「人間くさい」という形容詞をつけたのは、人間のアナログ感覚や現場のきめ細かい配慮が生きるようなデジタルシステムやサービスという意味である。
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