「高度外国人材」が働きやすい国に

経済復活の切り札は?

米山 伸郎 日賑グローバル株式会社代表取締役
ニュース 社会
米山伸郎氏

 筆者は中小企業向けに「高度外国人材」を正社員として紹介している。出入国在留管理庁が定める就労資格において研究者など高度に専門的な能力を持つ外国人材に与えられる「高度専門職」というビザがあるが、本稿の高度外国人材とは、そこまで高度な専門性はないものの、大学で語学や工学の知識や能力を身に付け、「技術・人文知識・国際業務」という就労資格を与えられている人材で、日本語も上手な外国人を指す。

 終身雇用の文化が残る日本では、人材採用の成否の判断は、社員の定着率でなされる場合が多い。だが海外では終身雇用の文化は薄いため、採用された人材の成長とそれに伴う会社の業績向上への貢献がひとつの指標になってくる。

 筆者のこれまでの高度外国人材紹介の経験において、採用がうまくいった場合の共通項に「英語力、情報発信力、交渉力の活用」が挙げられる。就職先の会社が海外展開を考えている場合、外国人材が入社後、会社の製品や技術を理解し、ホームページやSNSで英語や母国語で情報発信することで、世界の潜在顧客と出会うチャンスを高めているケースが多い。海外の潜在顧客が調達したい製品の候補をネット検索する場合、日本企業が和製英語でネイティブが使わない表現で情報発信していても見つけてもらえない。こうした問題に気づいてネイティブ表現に変えたり、検索エンジンの上位に表示されるように工夫することで、とくに米国の潜在顧客を発掘する発信をして会社に貢献するアメリカ人の活躍を筆者は見てきた。また、海外の展示会でビジターに説明し、引き合いに応えて活躍する外国人社員の様子も見てきた。さらには日本のハンコや弁当箱を、越境ECサイトを通じて欧米に輸出しているアメリカ人やフランス人がいる。彼らには母国で日本の何が好まれるかがわかる感性があり、それが大きな強みだ。

 一方、高度外国人材が定着せず早々に転職してしまうケースに共通して見られるのは、彼らが自分の成長を感じられる場や自分の力を活かせる仕事がない場合である。そこには会社との意思疎通・相互理解の不足が感じられる。母国を離れるリスクを取った高度外国人材は、異文化の日本で成長を目指す気持ちが強い。主体的に考え、行動し、会社からの評価を基にさらに上を目指すという目的意識がはっきりしている。

移民の「多様性」が生産性を高める

 受け入れ側の企業に求められるのは、日本の価値観だけに基づく人事ではなく、多様な価値観を認め、それぞれの異なる能力をフルに発揮させるダイバーシティマネジメントであろう。そこには、仮にその外国人材が成果を出した後に転職したとしても良好な関係を続け、グローバルな人脈として育もうとする姿勢も含まれる。

©iStock

 単純化して考えれば、「経済力=稼ぎ手の数×稼ぎ手一人当りの生産性」となる。かつて日本は高度成長期に稼ぎ手が増え、生産性もカイゼンに象徴されるチームワークで高めてきた。ところが今、日本はいずれの要素でも後れをとっている。

 一方、稼ぎ手の数の増大と生産性向上のいずれにおいても外国人材(移民)で成功しているのが米国である。ただ米国は人種や性差、LGBTQ対応の問題なども目立つ。そうした違いを問題でなくプラス(生産性向上)に生かそうとするのがDEI(ダイバーシティ、平等、包摂)経営であり管理職のダイバーシティマネジメント力である。たとえばウォルマートやペプシコ、アップルなどは多様性ある人材を採用することで顧客の多様なニーズに応え、市場拡大に成功してきた。政治の分断の混乱をよそに、米企業はDEIを定着させ、生産性の向上に余念がない。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : ニュース 社会