ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、スティーブ・ウォズニアック(Stephen Gary Wozniak、アップル共同創業者)です
2017年、日本の人材サービス大手パーソルの広告キャンペーンに、85歳の現役モデル、カルメン・デロリフィチェとともに起用されたのがこの男。アップル創業期のパソコン「アップルⅠ」、「アップルⅡ」を独力で設計した大天才スティーブ・ウォズニアックだ。「はたらいて、笑おう。」のキャッチ・コピーの上で、破顔する太っちょの髭面を覚えている人も多いだろう。
グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの「GAFA」が世界経済を牽引する現代は「100人のエリートが1人のオタクに負ける時代」と言われる。それをはじめて実現し、「ウォズの魔法使い」と呼ばれた「生ける伝説」である。
1950年、カリフォルニア州サンノゼで生まれた。父は米国防衛・航空機メーカー、ロッキードのエンジニア。6歳でアマチュア無線の免許を取り、13歳の時にはトランジスタを使った簡単なコンピューターを作って科学コンクールで優勝した。
大学生の時、コンピューター・メーカーのヒューレット・パッカード(HP)の夏季インターンシップでスティーブ・ジョブズと出会う。意気投合した2人は、国際電信電話諮問委員会のハンドブックを読んで長距離電話を無料でかけられる装置を作り、大儲けした。装置を組み上げたのがウォズニアック。それを売りさばいたのがジョブズだった。
カリフォルニア大学バークレー校在学中にウォズはHPに採用された。仕事の傍ら、1975年にシリコンバレーで結成されたコンピューター・オタクの集まり「ホームブリュー(自家醸造)・コンピューター・クラブ」にジョブズと一緒に参加して、趣味のコンピューター作りを続けた。
ジョブズはウォズニアックが開発したパソコンのデモ機を自分が働いていたゲーム機メーカーのアタリ社に持ち込んだが相手にされず、ウォズが働くHPも関心を示さなかった。
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source : 文藝春秋 2019年8月号