ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、マイケル・デル(Michael Saul Dell、Dell Technologies会長兼CEO)です
米フォーブス誌には、毎年恒例の名物企画「億万長者ランキング」がある。1991年、26歳にして3億ドルの資産でランクインしたのがマイケル・デルだ。相続ではなく自らの力で資産を築いた「セルフメイド」の中で、当時最年少となるこの記録は、2008年にフェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグが24歳で登場するまで破られることはなかった。ちなみにアップルの創業者、スティーブ・ジョブズがランクインしたのは27歳のとき、マイクロソフトのビル・ゲイツは30歳のときだ。
1965年、テキサス州ヒューストンで裕福なユダヤ人家庭に生まれた。父親は矯正歯科医、母親は株式仲買人だった。アメリカでは夏休みになると、子供に家の前でレモネードを売らせてビジネス感覚を教える習慣があるが、デルの母親は「もっと稼げる仕事をしなさい」と教えた。
12歳の時には流行していた切手収集に目をつけ、珍しい切手を集めたカタログを作り、雑誌に広告を出して販売。2000ドルを稼いだ。
その後、新聞の購読契約を取るアルバイトをした。顧客データを調べ、新聞を購読する人は、持ち家があり社会的地位の高い人が多いことを発見。住宅ローンの申し込み名簿を手に入れ、重点的に電話をかけた。16歳の時には、大人顔負けの年収1万8000ドルを稼ぐまでになった。
コンピューターとの出会いは15歳のとき。流行していたパソコン「アップルⅡ」を買ってもらったのだ。ところが、好奇心を抑えきれず中身を分析するために早々に分解してしまった。
「医者になって欲しい」という親の願いからテキサス大学に進んだが、この頃、若者の間で流行っていた「ホーム・ブリュー(自家醸造=自作のコンピューター)」に熱を上げた。
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source : 文藝春秋 2019年7月号