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鷲田清一氏
本書は、筆者が大阪大学総長(2007年〜2011年)、京都市立芸術大学の理事長・学長(2015年〜2019年)を務めた計8年間の式辞集だ。
「式辞を述べるのは、学長職のなかでも特に重い仕事でした。何を語るべきか、1年中考えていましたね」
哲学者である氏が、学生たちに「言葉を贈る」ことの意味を問いながら織り上げられた言葉たちは、「聴く」のではなく「読む」ことで別の味わいを生む。
例えば、「教養」という言葉。
〈教養とは、一つの問題に対して必要ないくつもの思考の補助線を立てることができるということ〉
〈自分が何を知っていて何を知らないか、自分に何ができて何ができないか、それを見通せていることが「教養」というものにほかなりません〉
「『教養』という一語では、ありふれていて、心に届かなくなっています。教養とは、自分の専門性を補完するためのものではなく、市民社会の中で生かすためのもの。それを伝えようとしました」
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source : 文藝春秋 2020年5月号