より多くの人の知恵が集まればより正しい政策が立てられる、とわれわれは信じて長い。足し算だとそうなるから、単純に考えれば当を得ている。だがこれだと、リードする人の存在理由が失われ、その結果として、責任の所在が不明確になってしまう。不満があれば、昔は皇帝や王のせいだと悪口を言っていればよかったのが、今では不満は、誰に対してぶつけるのか。ブリュッセルに対して? それとも、ブリュッセルのEU官僚に叱られるのを怖れて何もできないでいる、自国の政府に対して?
もう二度とヨーロッパの国々の間では戦争をしないという高邁(こうまい)な理想のもとに設立されたヨーロッパ連合だが、その道筋ともなると簡単にはいかないのがますます明らかになっている。
八年ほど前だったか、二カ月かけてヨーロッパ中を旅していた息子から、ブリュッセルで売っていたという一枚の絵葉書が送られてきた。「パーフェクト・ユーロピアン」と題され、EU参加の各国人を絵つきで並べて評したものだが、作者がイギリス人だけに、痛烈な皮肉にあふれている。つまり、完璧なるヨーロッパ人とは、
イギリス人のように、料理をする人
ドイツ人のような、機知に富んでいる人
フランス人のように、車の運転をする人
イタリア人のように、自制力がある人
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source : 文藝春秋 2013年7月号