月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。自民党に「高所恐怖症」が蔓延し始める一方で、瀕死の民主党に生体反応が……。
5月27日午後、東京都千代田区の日本外国特派員協会は、記者でごった返していた。日本維新の会の共同代表・橋下徹の記者会見。300人を超える内外のジャーナリストが集まり、会場に入れない約100人が別室でモニターを見守った。
5月後半の政局は橋下徹が主役だった。それも維新にとっては悪夢のようなドラマの主役を、橋下は演じ続けた。
旧日本軍の従軍慰安婦を容認したともとれる発言を繰り返したばかりか、あまつさえ在沖縄米軍の司令官に、米軍の犯罪防止のために「風俗業を活用すればいい」と“提案”したことで、中国、韓国だけでなく米国、そして国内の女性たちからもひんしゅくを買った。
外国特派員協会といえば、1974年、当時首相だった田中角栄が外国人記者から金脈問題の質問を受けて立ち往生し、辞任に追い込まれていった舞台として有名だ。だから政治家たちは、ここで会見する時は身構える。
当然、橋下もこのことは知っている。約2時間半におよぶ質疑応答は、時にメモに目を落とし、時に通訳に確認しながら、一つずつ丁寧に答えた。だが、理解を得られたには程遠い。橋下の口からは「発言に国民が『ノー』と言えば、参院選で維新は敗北するでしょう。結果を受けて私が代表のままでいられるかどうか」と弱気の発言も飛び出した。
もっとも維新の勢いは4月の時点で失われつつあった。4月14日に行われた兵庫県伊丹市と宝塚市の市長選では公認候補が惨敗。両市長選で勝ち、7月の参院選につなげるという維新の目論見は崩れていた。その矢先の橋下発言。党の支持率は激減し、5月27日付の日経新聞の世論調査で「参院選の投票先」として維新を選んだのは、前月の3分の1となる3%であった。
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source : 文藝春秋 2013年7月号