月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。国会より選挙の方が楽……美酒に酔う安倍の周囲は落とし穴だらけ。
「前回とは、まったく違う選挙だったね」
「親の仇」とまで称した参院選に圧勝した首相・安倍晋三は投票日翌日の7月22日夜、感慨深げに振り返った。首相官邸にほど近いザ・キャピトルホテル東急にある日本料理店「水簾」に集めたのは、惨敗して無念の退陣に追い込まれた六年前の参院選をともに戦った第一次内閣の秘書官たち。「国会より選挙の方が楽だった」「これから引き締めていかないと」。首相秘書官・今井尚哉、財務省主税局長・田中一穂、内閣情報官・北村滋らとの勝利の宴は1時間を超えた。
参院選は危なげのない運びで、番狂わせのない予想通りの勝ち方だった。秘書官たちとの美酒に酔う数時間前には、党本部での記者会見で「新しい自民党に生まれ変わった」と宣言した。だが古来、戦いは「勝って兜の緒を締めよ」と言われる通り、圧勝した時こそ落とし穴が待っている。
「新しい自民党」を宣言した安倍のように、1986年の衆参ダブル選挙に大勝し「自民党は左にもウイングを広げた国民政党になった」と自賛した首相・中曽根康弘は長期政権を夢見たが、すぐに売上税の問題でつまずき、総裁任期の延長も1年にとどまった。「1年や2年ではなく6年かけないと、憲法改正などの宿願は達成できない」と漏らす安倍の周囲にも、いくつもの罠が待ち受ける。それは参院選当日から1週間ほどの政界の動きを見ても明らかである。
一つ目は来年4月から消費税を予定通り8%に引き上げるかどうか、だ。
参院選投票日の7月21日昼、安倍は副総理・財務相の麻生太郎と向き合っていた。「このままでは独裁者になりますよ。謙虚にゆかないと」と語りかける麻生に、安倍は「そうですね……」と答えるばかりだった。モスクワで開いていた主要二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議から帰国してすぐ、麻生が安倍と食事をともにしたのは、今後の政局への対応と「アベノミクス」をめぐる国際的な評価を伝えるだけではない。消費税率の引き上げと財政再建が、国際公約になっている重要性も刷り込んでおく意味合いがあった。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2013年9月号