欧州議会の選挙も数日後に迫っているというのに、現在の情況にまったく関心が持てないでいる。右派・中道・左派ともにさまざまな意見を出してはいるのだが、そのどれ一つとして説得力を感じさせるものがない。政治家、彼らへの御意見番と任じている有識者、毎日何かは報道しなければ仕事にならないマスメディア、そして昨今とみに力を持ったと自認するブロガーたち。これら全員の権威の失墜を、言い換えれば影響力の無さを、見せつけられた想いになっている。
というわけで現情からは刺激さえも受けなくなっていた私の関心をひいたのが、今年が没後五百年になることからイタリア中で記念行事が催されているレオナルド・ダヴィンチになった。ちなみに私の大学卒業論文のテーマは「イタリア・ルネサンスの芸術」というのであったから、あながち知らない分野というわけでもない。
だがこの分野も、記念展示会や記念番組で見たり聴いたりしたかぎり、研究者や有識者たちの意見で説得力を感じさせたものはほとんどなかった。芸術の分野でさえも、権威や影響力を持つ人はいなくなったということか。それとも、レオナルドは永遠の謎と言ってもよい存在だから、そのレオナルドを解明しようと努めること自体が無用な労なのか。
卒論を書いていた当時から消えないのが、世の中には天才と秀才と一般の人々しか存在しないという想いだった。能力の差ではない。能力のちがいにすぎないのだが。
天才とは、彼自身では明確に意識していなくても、明確な成果を後世に残せる人。
秀才は、天才の業績を理解しそれを一般の人に解説することが、自分にはできると信じている人。
一般人とは私の息子のように、レオナルドの作品を見たりベッリーニ作のオペラ『ノルマ』を聴いたりすれば、やっぱりいいね、とは言う素直な人々。私もその一人。
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source : 文藝春秋 2019年7月号