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内館牧子さん、101年のバトン

編集長ニュースレター vol.31

新谷 学 (株)文藝春秋 取締役 文藝春秋総局長
エンタメ 芸能 読書

 いつもご愛読いただき、ありがとうございます。

 7月号から脚本家・内館牧子さんの新連載が始まりました。

 タイトルは「ムーンサルトは寝て待て」

 

 内館さんといえば、大河ドラマ「毛利元就」や朝ドラ「ひらり」など、ヒット作多数、作家としても、「終わった人」、「老害の人」などベストセラーを連発しています。

 2023年新年特大号では「集まれ!『老害の人』」という、大変面白いうえに深く考えさせられる原稿をいただきました。

 エッセイストとしても切れ味抜群で、「週刊朝日」のコラム「暖簾にひじ鉄」は、2001年から続く同誌の看板連載の一つです。

 その「週刊朝日」が休刊するとの情報を得た私は、すぐに内館さんにアポを取り、3月初めに事務所でお会いしました。

「『週刊朝日』が休刊したら、それを引き継ぐ形で『文藝春秋』で連載エッセイをお願いします!」

 私はお願い事をする時はいつも単刀直入です。

 内館さんにはご快諾いただき、「週刊朝日」が6月9日号で休刊し、「暖簾にひじ鉄」が1060回で終了した翌週から新連載をスタートすることができました。

「週刊朝日」が創刊したのは1922年2月、本誌は同じ年の12月。ちょうど101年にあたり、人気連載のバトンタッチとなったのです。

 ただ、新連載スタートは誠にありがたいのですが、頭を悩ませたのがタイトルです。

 なにしろ「暖簾にひじ鉄」が素晴らしい! 

 ウンウン唸っていた私に助け船を出してくれたのが、内館さん担当をお願いした若手女性編集者のAさんです。

 このAさんは大学を出て新潮社に入り、昨年から縁あって本誌に加わりました。「週刊新潮」で記者として3年間鍛えられただけに、どんな場面でもいつも落ち着き払っている。大相撲が大好きで、プラン会議では必ず関連ネタを押し込んできます。

 最初にAさんから送られてきたタイトル案は「月夜のムーンサルト」でした。内館さんは相撲だけでなく、プロレスも大好き。中でも武藤敬司さんのファンだと打合せの際に聞いたのを受けて、彼の得意技にちなんでひねり出したそうです。

 実は、Aさんからのメールには「最初は『ムーンサルトは寝て待て』を思いついたんですけど、ことわざ系だと『暖簾にひじ鉄』に敵わないので」と書き添えてありました。

 私の目はその部分に釘付け、そして爆笑。早速、内館さんにご提案したところ大いにお気に召していただきました。

 ムーンサルトプレスというのは、リング上に仰向けに倒れた相手にコーナーポストから宙返りして体当たりする大技。相手が寝て待っていてくれないと成立しません。まさにプロレスの本質でもある、阿吽の呼吸を見事に突いたタイトルです。

 連載第1回のテーマは「ちょっとのストレス」。内館さんが今もこだわる手書き原稿の意外な効用を紹介しています。

 次の100年に向けて、末長くご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

 文藝春秋編集長 新谷学

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

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