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編集長の趣味丸出しの連載陣

編集長ニュースレター vol.19

新谷 学 (株)文藝春秋 取締役 文藝春秋総局長
ニュース 社会 政治

 いつもご愛読いただき、ありがとうございます。

 私が「文藝春秋」編集長に就任したのは、2021年7月のことです。

 真っ先に考えたことの一つが、新しくどんな連載をはじめるか。

 雑誌とはきわめて人間臭いメディアです。作っている人間の思想信条、好き嫌い、趣味、人生観まで、いやおうなしににじみ出てきます。

 とりわけ編集長がかわり、新しくはじまる連載のラインナップを見ると、それがくっきりと見えてくるものです。

 そこで私の場合を振り返ると、さすがに恥ずかしくなるくらい“自分らしい”新連載が並んでいます。

 第一弾が、2022年新年特別号からはじまった鹿島茂さんの「菊池寛アンド・カンパニー」。本誌創刊100周年に際して、創業者の伝記を残したい。しかも流行作家の顔にとどまらず、編集者、あるいは起業家としての仕事ぶりに焦点を当ててほしいと考え、渋沢栄一や小林一三といった優れた財界人の伝記の著者でもある鹿島さんに、編集長に就任早々お願いに行きました。激動の時代の渦中で、「原点回帰」の大切さを日々痛感している私にとっても大変勉強になる連載です。

 同じ号では西岡研介さんの「部落解放同盟の研究」もスタートしました。ポリコレ全盛の世の中なのに、解同の存在感が希薄に感じられるのはなぜか。タブーを恐れず切り込む相棒は、「週刊文春」で一緒に修羅場を踏んできた西岡研ちゃんしかいないと即断即決でした。

 2月号からは清武英利さんの「記者は天国に行けない」。メディア不信が叫ばれて久しい中、スクープを求めて地べたを這いずり回る記者たちの息づかいを、自らの経験も踏まえて刻み付けてほしいとお願いしました。コスパ、タイパが幅を利かせ、プライバシー保護が重んじられる昨今ですが、まさにその流れに逆行するような稼業にいそしむ記者たちの心意気を伝えたいと強く思ったのです。

 3月号は伊藤彰彦さんの「仁義なきヤクザ映画史」。「映画の奈落」を読んで以来、ぜひ伊藤さんに原稿を頼みたいと切望しており、私の趣味が、最も色濃く出た連載です。

 以後、家森幸男さんの「世界最高の長寿食」(4月号)、北村滋さんの「外事警察秘録」(6月号)、岩田明子さんの「安倍晋三秘録」(10月号)、河合香織さんの「老化は治療できるか」(2023年3月号)と続きます。

 こうして見ると、「仁義なき戦い」、「大統領の陰謀」や「ブルース・ブラザース」をこよなく愛する人間であることがバレバレですかね(笑)。

 すでに連載終了している「世界最高の長寿食」、「仁義なきヤクザ映画史」をはじめ、いずれも基本的には書籍化する予定ですので、どうぞお楽しみに!

 文藝春秋編集長 新谷学

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース 社会 政治