【農協“不正販売”の手口】「契約書の署名を偽造された」

中編

窪田 新之助 ジャーナリスト

電子版ORIGINAL

ニュース 社会 経済 企業 働き方

 共済商品の営業ノルマに喘ぐJA職員たち。彼らが、家族や知人を巻き込んでまで自爆営業に走る実態は、JAちばみどりの内部文書をもとに、本稿の前編で紹介したとおりだ。さらに営業の現場では、顧客を騙して売りつける不正販売が多発している。その魔の手は、ときに家族や、家族ぐるみで付き合いのある知人にまで及ぶ。今回の中編では、筆者のもとに届いた被害者たちの悲痛な声をもとに、不正販売の巧妙な手口を明らかにしていく――。(前編はこちら

『農協の闇』出版後に届いた被害者の声

 職員がノルマを達成するためには、当然ながら新たな契約を獲得するしかない。だが、毎年のように襲ってくる過大なノルマを達成するだけの新規顧客が、都合よく周りにいるわけでもない。とくに農村部ほど人口減少は著しい。

 そこで、既存の顧客に既契約から別契約への「転換」や「解約新規」を勧めることになる。各地域のJAによって違いはあるものの、新規契約から1年や2年ほどの一定期間が経つと、転換や解約新規でも、営業ノルマのポイントとして計上されるからだ。

 もちろん顧客が納得したうえで契約を変更するのなら、何も問題にはならない。だが、実際には顧客との間でトラブルになっている事例が全国で頻発しているのだ。ときには顧客が知らないうちに、あるいは騙されて、転換や新規契約が結ばれる悪質な事例もある。過大な営業ノルマに耐え切れず、職員たちは自爆営業どころか不正販売にまで手を染めてしまう実態があるのだ。 

 私は、JA共済を巡るノルマや自爆営業、不正販売の実態について、拙著『農協の闇(くらやみ)』(講談社現代新書)で追及したが、出版後、JA共済の契約者やその家族、職員など不正販売の被害者たちから、実に多くの苦情の声が、私のもとに届くようになった。

 家族や近所の知人がJA職員で、そんな信頼していた人たちに騙され、不利益を被った話も数多く寄せられた。今回は特に悪質と思われる事例に絞って、周到に仕掛けられた不正販売の実態と、被害者の苦しい心のうちを紹介したい。まずは、家族に騙されたという俄かには信じがたい事例から見ていこう。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース 社会 経済 企業 働き方