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「恋愛離れ」は淋しい
恋愛小説が売れないと聞く。若い人は恋愛に熱量を注がないし、社会の風潮としても以前のように恋愛をすることは難しくなった。そのような時代の逆をいくのが、7月号の特集『100年の恋の物語』である。中でも、伊藤野枝の評伝小説『風よ あらしよ』の著者・村山由佳さんの記事『伊藤野枝と大杉栄の「死装束」』は特に印象に残った。野枝の奔放な生き方は今の不寛容な時代なら間違いなく炎上するだろう。けれど、ファッション感覚のライトな不倫ではなく、それが「死装束」を着るくらいの、命がけの覚悟がある不倫ならば、誰が責められようか。
20代前半の女性が思想を同じくする男性と恋に落ち、人生を賭けて政府に意見したというのを知ると、自分の生き方が途端に生ぬるく思える。
私は以前から村山さんのファンで、数年前、村山さんが読者からの質問に答えるという企画に質問を寄せ、ご本人から回答を頂く機会に恵まれた。
「私の娘は恋愛小説なんか読まない、意味がないと言い、女親としては淋しい気もするが、そのことをどう思うか」という質問に、「興味のない人に無理強いするのはよくないが、私が恋愛小説を書き続ける理由は、恋愛ほど人間のあらゆる感情を揺さぶる装置はないからです」と答えて下さった。
私は恋愛は人生の大きな果実であると思う。今の若い人の「恋愛離れ」が貧困とセットで論じられたりすると、恋愛は90年代までの豊かさや余裕の象徴だったのかと淋しい思いになる。
(滋賀県 高田友子)
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source : 文藝春秋 2023年8月号