読者からのお便り 2023年9月号

三人の卓子

ニュース オピニオン
 

創刊100周年の雑誌『文藝春秋』での名物コーナー「三人の卓子」。読者の皆様からの記事への感想を募集・掲載しています。
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残念でならない行き違い

 8月号の特集『現代の知性24人が選ぶ 代表的日本人100人』では、国連難民高等弁務官・緒方貞子さんの活動に触れた筆者が複数人いたが、その記事を読み、私は強く心を打たれた。緒方さんは国谷裕子氏のインタビューに「私は人権屋ではなくリアリスト」と話したそうだが、その言葉の裏に秘められた彼女の強い意志、難民に対する切実な思い、深い愛こそが彼女を突き動かしていたのではないだろうか。

 緒方さんは、トップを務めた国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のミッションを実行するため、前例や既存のルールにとらわれず、自らの判断で決断を下し行動している。私は長く公務員の職に身を置いていたからよく分かるのだが、多くの場合、仕事は前例主義だった。仕事に失敗しないため、そして保身のためである。国連の職も公務員と近いものがあると思うが、彼女のように豪快で大胆な決断が下せる人でない限り、あれほどの仕事はできなかっただろう。今後、国際社会で活躍したいと思う若者たちは、彼女のように物事を大局的にとらえ、行動できるような資質を養ってほしいものだ。

 30年ほど前、私はJICAの派遣専門家として東アフリカのマラウイ共和国に派遣され、首都リロングウェにあるリロングウェ国際空港再活性化プロジェクトに関わったことがある。その時、JICAのマラウイ事務所で緒方さんと行き違いになった。ほんの数分の差だったらしく、今でも残念に思えてならない。

(愛知県 升田文男)


年を取ることへの恐怖心

 8月号、奥野修司氏の『認知症は病気ではない』は、高齢化社会がさらに進む日本において、多くの人に読んでほしいと思える内容でした。高齢になると、手足の筋力低下だけでなく認知機能が低下し、生活力が低下することは自然なことです。しかし「認知症」という診断がつくと、周辺症状と呼ばれるような問題行動が出て、その人らしさも失われるという捉え方をされる傾向が強いように思います。周辺症状は周囲の関わり方によって改善されることも少しずつ周知されているところですが、まだまだ恐れられることの方が多いようです。

 去年、あるテレビドラマで主人公の女性が実母には認知症状はなく、頭はしっかりとしていると、意気揚々と語るセリフがあり、私は違和感を覚えました。認知症でないことは、人生において「勝ち」ではありません。認知症になるのは個人が予防に心がけなかったためという風潮も、高齢者を追い込み、不安にさせてしまうだけだと思います。

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source : 文藝春秋 2023年9月号

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