サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します
この世界はいつ誕生したのか――とは、誰もが一度は抱いたことのある疑問だろう。現代科学によれば、その答えは約138億年前とされている。だがここに至るまでには、様々な分野の天才たちによる論戦と貢献があった。
古代ギリシャのアリストテレスは、宇宙には始まりも終わりもなく、ただ永遠にそこにあると説いた。一方、かのニュートンは聖書の記述を詳細に研究し、この世界の始まりは約6000年前だと結論している。
この見解に異を唱えたのは、19世紀の地質学者たちだった。彼らは、地層の堆積や隆起によって現在見られる地形が生ずるには、数億年が必要であるとした。この主張は、後にダーウィンの進化論にも大きな影響を与えることになる。
そして1862年には、物理学者トムソンが論争に参戦する。彼は熱力学の理論に基づいて地球の冷却速度を算出し、地球の年齢を数千万歳から4億歳の間と推定した。他にも様々な主張が展開され、互いに攻撃し合うものの、決定打といえるものはなかった。
20世紀に入り、論争に新たな局面をもたらしたのは、キュリーらによる放射性物質の発見だった。ウランなど極めて寿命の長い放射性元素の存在は、地球誕生から少なくとも数十億年が経過していることを示していた。現在では、地球の年齢は約45億歳というのがほぼ定説となっている。
では宇宙全体の年齢はどうだろうか? アインシュタインは宇宙に「始まり」というものはないと考えていた。しかし1929年、ハッブルは宇宙が膨張しつつあることを発見し、この宇宙はある一点から始まったと想像されるようになった。これがいわゆるビッグバン仮説だ。そしてようやく21世紀初頭、様々な測定を突き合わせ、ビッグバンが起きたのは137億年前という推定がなされた。さらなる精密な測定の結果、2013年にこの数字は138億年と修正され、今のところこの数値が受け入れられている。
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source : 文藝春秋 2023年9月号