ポピュリズムに包囲される中央銀行

新世界地政学 第95回

ニュース 社会 経済

 米中貿易交渉がなかなかうまくいかない。そんな時、誰かに当たるのがトランプ流のようで、ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(Fed)議長に突如、矛先は向けられた。

「Fedが中国並みに利下げをやっていれば、こんな交渉はとうの昔に終わっていた、我々は楽勝だったのに」

 トランプは、Fedが昨年末まで利上げに前のめりになり、2019年も利上げを2度ほど予定していたことに対して、「気でも狂ったのか」と悪態をついた。こんな利上げ病のFedでは、ドル高をもたらし、中国からの輸入は増え、景気も悪くなる、とFedをこき下ろした。昨年秋には、パウエルを「任命したことを後悔しているかも」「Fedには不満だ。オバマのときはゼロ金利だった」とぶちまけた。オバマにはゼロ金利で媚びておきながら、オレには高金利を浴びせやがって、といわんばかりである。

 もっとも、米国の大統領がFedの利上げを(とりわけ選挙前は)封じ込めようとしたことはこれまでも何度もあった。

 1984年夏、レーガン大統領はポール・ボルカーFed議長をホワイトハウスに招いた。ボルカーは大統領執務室ではなくライブラリーに通された。レーガンとジム・ベーカー首席補佐官が座って待っていた。

 ベーカーはボルカーに言った。

「大統領は、大統領選挙前に利上げはしないようにと言っている」

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source : 文藝春秋 2019年7月号

genre : ニュース 社会 経済