抗がん剤は「演奏会が終るまで待ってほしい」 全身の骨に多発転移しても担当医に懇願した理由

僕の前立腺がんレポート 第5回

長田 昭二 医療ジャーナリスト

電子版ORIGINAL

ライフ 医療

ステージ4のがん患者となったベテラン医療ジャーナリストが読者に伝えたいこととは――。手記「医療ジャーナリストのがん闘病記」(文藝春秋2023年7月号)が大きな反響を呼んだ長田昭二氏(57)が、「文藝春秋 電子版」オリジナル連載で、自身の病をレポートする。

 いまから27年前の1996年12月22日。上野の東京文化会館大ホールで、ある演奏会が開催された。

 群馬交響楽団特別公演「第九」東京演奏会。

「第九」とは、言わずと知れたベートーヴェン作曲交響曲第九番ニ短調作品125「合唱付き」のこと。

 このコンサートで一人の青年がデビューした。そう、僕である。

 デビューと言っても合唱団の中の「その他大勢」の一人としてステージに乗っただけのことなのだが、以来僕は年末になるとオーケストラの背後から「フロイデ!」と叫ぶことを趣味としてきたのだ。

10年ほど前の「第九」本番での様子。中央が筆者(筆者提供)

 一時期は「第九」以外にも、ロシア民謡専門の混声合唱団に臨時雇いの団員として入れてもらい、やはりプロのオーケストラの後ろで歌ったり、ロシアから来日した国立の民族楽器オーケストラと共演したりもした。僕のようなフリーのモノカキは日頃一人で行動しているので、合唱団のようなかっちりとした組織の中で、協調性を旨とし、「決められた音以外は発してはならない」という制約に縛られて作品を完成させていく作業が楽しいのだ(個人の意見です)。

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source : 文藝春秋 電子版オリジナル

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