月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。補選1勝1敗で首の皮一枚つないだ岸田だが、減税をめぐり党内は猛反発
「経済、経済、経済。私は何よりも経済に重点を置いていく」
臨時国会召集から3日経た10月23日の衆院本会議場。首相の岸田文雄は所信表明演説で声を徐々に強めて、「経済」を連呼した。前日に投開票された衆院長崎4区、参院徳島・高知選挙区の両補欠選挙で1勝1敗に終わったにもかかわらず、どこか高揚感にあふれていた。
それもそのはず、秘書を殴った高野光二郎の辞職が発端だった参院徳島・高知の劣勢はともかく、衆院長崎4区も苦戦が伝えられ、「2敗も覚悟しなければいけない」(自民党選対幹部)と自民党内には悲壮感が漂っていたからだ。辛勝とはいえ「2敗と1勝1敗では“天と地の差”」(首相周辺)であり、岸田は胸をなでおろした。
勝利した長崎4区は岸田派(宏池会)の北村誠吾元地方創生相の死去に伴う選挙。後任候補となった金子容三も岸田派にいた金子原二郎元農相の長男だ。党内では「宏池会の選挙」と目され、ここでの敗北は、ただでさえ低支持率にあえぐ岸田の求心力低下に拍車を掛ける。岸田自身も合間を縫って地方議員に直接電話を掛け、支援を訴え続けた。
衆参の補選や再選挙を年2回に統一した改正公職選挙法が2000年秋に適用されて以降、その結果が政権に影響を与えるようになった。最近では21年4月の衆院北海道2区と参院長野選挙区の両補選に、参院広島選挙区再選挙を加えた「トリプル選」が、時の政権の命運を決めた。自民党が不戦敗を含め全敗すると、当時の首相、菅義偉では「選挙が戦えない」との声が高まり、菅は同年の党総裁選出馬を断念した。
岸田の後釜を虎視眈々と狙う茂木敏充幹事長は長崎4区補選の告示日である10月10日に応援に入ったが、厳しい情勢を耳にするや、距離を置くようになり、再度長崎入りすることはなかった。「もっと俺を大事にした方がいいんじゃないのか」と周囲に嘯いて、早々に泥舟から下りた。
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source : 文藝春秋 2023年12月号