「今晩何食べようかな?」という誰もが悩むテーマに寄り添ってきたNHK「きょうの料理」。1957年11月4日に始まり、2023年秋に67年目を迎えました。そして同年、世界最長放送のテレビ料理番組として「ギネス世界記録」に認定されました。
私は入社以来ずっと、この番組に携わり、「食といのち」という尽きることのない問いに夢中になっているうち、あっという間に30年が経ってしまいました。この番組は猛烈に変わり続けてきましたが、頑固に変わらなかった面もあります。
初回放送は、料理紹介ではなく「栄養とは何か」を解説する内容でした。戦後復興とはいっても、みんな空腹で4人に1人が栄養不足。「健康と食」が重要な課題の時代でした。一方で翌日の第2回では、新しいレシピにも挑戦、それは「かきのカレーライス」でした。カレーに海の「かき」を使うとはびっくり。かきのゆで汁を余すことなく使い、コンソメも不要という斬新なものでした。
当時の番組は10分間の生放送。「タンタカ タカタカ タンタンターン♪」のテーマ音楽は冨田勲さんの作曲で、現在も変わりません。演出もそのままで、編集はいっさいせず一気に撮る回が今も3分の2を占めています。料理が出来上がっていくライブ感を大切にしたスタイルも長寿の秘訣だと思います。
これまでの放送回数は約1万5500回、紹介したレシピは約4万6600点、講師は約1500人に上ります(2022年11月4日現在)。
番組で受け継がれているルールは「全国どこでも、手に入りやすい調味料や食材を使うこと」。オイスターソースやバルサミコ酢などを初めて使うときは、何軒かのスーパーを回って、一般的に売られているか確認します。
もう一つのルールは「レシピを何度も確認すること」です。講師から届いたレシピは「試作さん」と呼ばれる外部スタッフが再現し、「煮る時間」「手順」「塩分やカロリーは適正か」など細かくチェックします。それを講師に戻し、無理なく安全に料理できるかをギリギリまで確認します。「信頼できるレシピ」は番組の生命線だからです。
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source : 文藝春秋 2024年1月号