「大喜利」おバカキャラで半世紀

林家 木久扇 落語家
エンタメ 芸能

昇太さんが司会に決まったときはハッとしました

 僕はもう、かれこれ54年間、『笑点』をやっています。先日、来年3月に卒業することを発表してから多くの方に「驚いた」と言ってもらいましたけど、司会者だって5人も見送っているんですよ。初代の立川談志さんから前田武彦さん、三波伸介さん、五代目三遊亭圓楽さんに桂歌丸さん……みんな死んでしまいました。「おくりびと」なんてあだ名がついてね、3月までに現司会の春風亭昇太を送ってやろうと思ってるんです。彼はものすごく嫌がって、「僕、まだまだ元気ですから」なんて言ってるけど、座布団をくれないときには「いつ? いつ?」って脅かしたりして。卒業までもう時間がないから(笑)。

 これだけ長くやっていると、視聴者の方に「いつも面白おかしなことばかり言っている黄色い人」というイメージが染みついてしまってね。出演し始めたばかりの頃は注目されるのが嬉しくて、僕は演芸界のスターになったんだと思っていました。でも、54年もの間「面白い人」でいるのは大変なんですよ。

木久扇師匠 ©文藝春秋

 人間ですから、本名の「豊田洋」のときもある。家族もいるし、自分の生活もあるなかで、寄席や番組収録、街中でお客さんやファンの方とお会いすると、「いつも面白いわね」なんて言ってもらえる。嬉しい半面、だんだんと「うわぁ、これは大変なことになったぞ」と思うようになりました。

 先日86歳になったのですが、この年齢でレギュラー番組を持っている人っていないんです。90歳の黒柳徹子さんはいまだお元気に司会をされていますけど、僕のように、この歳で目の前のお客さんを笑わせることに取り組んでいる人間は、世界中探してもいないと思います。本当はギネスブックに載ってもいいんじゃないかと思っているんですけどね(笑)。

メンバーとは食事に行かない

 昭和41年に始まり、半世紀以上も続く長寿番組になったのは、大喜利という「言葉の球投げ」で引っ張ってきたからだと思います。

 面白い言葉の球投げをするためには、おたがいに緊張感を保っていないといけません。だから、メンバーたちはふだん、一緒に食事に行ったりはしない。収録が終われば、はい、解散。“楽屋ドロボー”の(三遊亭)小遊三さんが帰り道に自動販売機の下に手を入れ、小銭を探しているのか、「ちびっこのどじまん」出身の山田たかおくんがいまもカラオケで歌っているのか、全然知らない(笑)。

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source : 文藝春秋 2024年1月号

genre : エンタメ 芸能