保守政治を侮辱した自民党裏金問題

日本の地下水脈 第39回

保阪 正康 昭和史研究家
ニュース 政治 昭和史

明治期以来の利益誘導政治が議会制民主主義を蝕んだ

 保守政治が蹂躪(じゅうりん)されている。日本の民主主義が侮辱されつつあると言ってもいい。

 言うまでもなく、自民党の派閥のパーティ券をめぐる裏金問題である。岸田文雄首相は、疑惑の中心にいる安倍派の閣僚4人などを更迭し、内閣改造を行って幕引きを図ろうとしたようだが、東京地検特捜部は安倍派、二階派の強制捜査に乗り出した。他ならぬ岸田派もパーティ券収支の不記載を指摘されており、国民の政治不信はかつてなく募っている。岸田政権の支持率は調査によっては20%を切り、状況は泥沼化していて予断を許さない。

安倍派の政治資金パーティー ©時事通信社

 今回は、いささか異例であるが、この問題に歴史的文脈から向き合おうと思う。いま保守を論じる際に、裏金問題を見ないで済ませるわけにはいかないと思うからだ。

 まず、前回までの議論を辿っておこう。

 戦争を熱心に推進した者たちが、敗戦後、真摯な反省を欠いたまま民主主義の牽引者になるという現実は、いまに至る日本現代史の孕む重大な矛盾であると言えた。戦後政治と戦後思想の様々な歪みを克服すべく、いまこそ「成熟した保守」の再興を求めて、私なりに論を展開してきた。

 まず私は、1960(昭和35)年以降、反体制運動が高揚する「政治闘争の季節」を、国民の熱意ある活力が発揮される「経済成長の時代」に転換して、戦後の安定した平和を築いた首相の池田勇人、その秘書官の伊藤昌哉、ブレーンであったエコノミストの下村治の3人組に注目した。彼らは左派を排除するのではなく、そのエネルギーを新たな国家建設の方へ振り向けるという巨視的な構想力も持っていた。

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source : 文藝春秋 2024年2月号

genre : ニュース 政治 昭和史