手足の痺れ、味覚障害、命か容姿か、職場への報告……サバイバーたちの生の声
(取材・構成 神保順紀)
がん患者支援団体「5years」(5years.org)を2015年に立ち上げ、10年目を迎えました。いまでは2万人を超えるがん患者とがん経験者、家族の登録があり、日本最大級のがん患者支援団体に成長しました。
がん患者だった自分自身の経験を踏まえて立ち上げた「5years」は、オンラインでの交流を中心に、患者と家族の悩みを解決するための組織です。その解決のために、われわれが提供しているのは「情報」と「経験知」。病気を乗り越え社会に戻った人々が持つ有益な経験を、患者の方々に紹介しているのです。
サイトでは、登録者の病歴・治療歴、自己紹介、さらには、いま「思っていること」などを記入してもらいます。その内容は、登録者なら自由に検索して閲覧できます。
また、患者同士が質問し答える相談コーナー「みんなの広場」があります。これまで1200以上の質問と、6000を超える回答が寄せられています。ネット上での交流だけでなく、リアルイベントやインタビューなども行っています。
そんな活動を通じて、多くのがん患者の悩みに接してきました。治療が進歩し、がんを乗り越えて社会に復帰することは当たり前になってきましたが、その過程では患者本人にしか分からない、たくさんの悩みが存在しています。
今回は、がん患者が直面する社会的な課題を知ってもらうため、2万人のメンバーに出会って見えてきた「現代のがん患者が抱える悩み」について、紹介したいと思います。
私のがん体験
はじめに、団体を立ち上げるきっかけとなった、私自身のがん体験からお話ししたいと思います。
私ががんだと分かったのは、2007年3月、42歳の時でした。
真冬の軽井沢で趣味であるマラソンの練習をしていた時に、凍結した路面で足を滑らせ崖から転落。右足首を骨折してしまいました。その治療で東京の大学病院に入院しましたが、約1か月後の退院前日、偶然にも睾丸の異常に気づいたのです。検査をしたところステージⅢbの精巣がんで、1週間後に手術と告げられました。頭の中は真っ白。さらに手術後には腹部、肺、首に転移があることもわかり、5年生存率は49%と告げられました。
3か月の抗がん剤治療が続き、17時間に及ぶリンパ節郭清手術も受けました。高熱や吐き気といった強い副作用との戦いの毎日で、辛くてたまらない。髪が抜け、体重が落ちて頬がこけてくるなど容姿も変わっていきました。抗がん剤治療の合併症で間質性肺炎も患いました。家族は励まし続けてくれましたが、言い表せないほど落ち込み、不安に苛まれる日々でした。
なんとか気持ちだけは前向きでいよう。そう考えたときに、ぜひ知りたいと思ったのが「がんを体験した人の経験談」でした。
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