誤解と曲解の社会史
新刊が毎月毎月100点ずつ湧いて出て来る。概算すれば年間1200点。新書判の出版状況について編集部に調べてもらった数字だ。その9割が書下ろしだと仮定して数量化すると、400字詰め原稿用紙に換算して1年で約30万枚。今ふうに文字数で表現すれば1億2000万字、となる。畏るべき「知的生産」(岩波新書の懐かしのベストセラーは梅棹忠夫の『知的生産の技術』でした)のお裾分けに与(あず)かるべく、毎月の新刊をチェックしていく。見落とし、見逃しがあるだろうことは、あらかじめ頭を深々と下げて、お詫びしておきます。
100点の中からひとつだけ選ぶ。新書判の売り場も、かくも激しい生存競争にさらされているのだろう。ミリオンセラーが望めない時代にあって、どうすれば、多数の読者に届くのか。なかなかの難問題だ。百花斉放、死屍累々、一発逆転、羊頭狗肉、適者生存といった四文字熟語が頭をちらつく。
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source : 文藝春秋 2024年2月号