都知事選165万票 選挙参謀も驚いた石丸ミラクル 

藤川 晋之助 選挙プランナー

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「人が集まりすぎて悩んだのは初めてです」

「政治」に目覚めたきっかけは、中学3年の時に起きた東大安田講堂事件です。大学でも政治活動に没頭し、サラリーマンを経験した後、23歳で、三重県選出の自民党田中派代議士の秘書になりました。ところが実際に政治の世界に入って愕然としました。学生時代にあれだけ熱く議論した安保や憲法や天皇制などは全く話題にならず、政治とは「予算の分捕り合戦」であり「利益分配」だと分かったからです。

 そんな失意のどん底にあって、何も知らずにいきなり関わったのが選挙です。市議会選、県議会選、衆院選を次々に経験しました。私自身はほぼ傍で見ていただけですが、当時の選挙は今とは違って大いに盛り上がり、まるで「お祭り」。「日常」ではなく「非日常」の世界。非常に燃えるんです。人生に目標をなかなか持てない時代に「これは面白いな!」と。しかもそこで勝利に貢献すれば、人のお役にも立てる。それで「選挙」にはまっちゃったんです(笑)。

 こう語るのは、7月の東京都知事選で「石丸旋風」を巻き起こし、約165万票を獲得した石丸伸二氏の陣営で選対事務局長を務め、「選挙の神様」の異名も持つ藤川晋之助氏(70)だ。藤川氏は、大阪市議を2期務めた後、「選挙のプロ」として144回の選挙に関わり、負けたのはわずかに14回。2023年には「藤川選挙戦略研究所」を立ち上げている。都知事選は当初、小池百合子氏と蓮舫氏の事実上の“一騎打ち”と見られていたが、石丸氏は驚異的に躍進し、蓮舫氏の得票を上回った。都民には知名度が高くなかった石丸氏がなぜここまで支持を集めたのか。その内幕を明かす。

選挙は「お祭り」だった

 代議士秘書時代にお手伝いした選挙は、私の“選挙戦歴”に入れていませんが、田中派は選挙に強いということで、いろんな選挙を手伝わされました。そこで都市と地方で選挙が全く異なることも学びました。

 当時の選挙費用は今の10倍ぐらいあって、衆議院選挙では「5当4落」と囁かれていました。4億なら落ちるが5億なら通る、という時代だったんです(笑)。今では選挙違反になりますが、「炊き出し」もありました。婦人部のおばさんたちが集まって、トンカツやカツ丼をつくって、「カツで選挙に勝つ!」と縁起を担ぐ。一番多い時は1日で1500人分提供しました。当然、お金はかかりますが、和気藹々と大勢で一緒に食べる。そうやって皆で選挙をお祭りのように楽しんでいたんです。

 それが小選挙区制になると、選挙にかける費用も10分の1ぐらいになってしまい、「炊き出し」も公職選挙法で禁じられました。しかし「あれやっちゃダメ、これやっちゃダメ」では、選挙はつまらないものになる。

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source : 文藝春秋 2024年9月号

genre : ニュース 政治