それでもトランプ主義は強い

冨田 浩司 前駐米大使

NEW

ニュース 政治 国際

ハリスの登場で戦略見直しは必要だが…

 それはあたかも戴冠式を思わせる風景であった。

 共和党全国大会の最終日、ドナルド・トランプ前大統領は指名受諾演説のため1時間半以上にわたり演壇に立ち続けた。それは、暗殺未遂事件からの健在ぶりを示すと同時に、共和党が名実ともに自分の党であることを誇示するものであった。

 大会期間中、会場では赤い帽子を被った支持者が思い思いのプラカードを掲げながら、お祭りムードを盛り上げ、予備選を最後まで争ったニッキー・ヘイリー元国連大使を含め、かつてのライバルたちが次々と登壇し、新しい指導者への忠誠を誓った。その一方で、正副大統領経験者であるブッシュ、チェイニー、ペンスといった重鎮の不在は、党内における主役の交代を雄弁に物語っていた。

共和党大会で演説するトランプ候補 ©共同通信社

 改めて振り返ると、一人のアウトサイダーが率いる大衆運動が10年も経たない間に二大政党の一つを掌握したことは、米国の政治史上類を見ない出来事である。実際のところ、トランプ主義の台頭があまりに劇的であったため、我々はこの運動といかに向き合っていくべきか、明確な答えを見出せていない。米国国内でも教育程度の低い、烏合の衆と侮蔑的に捉える見方、自由民主主義への脅威として危険視する見方などが交錯し、実像は定まっていない。

 そうした中で、共和党大会で見られたとおり、トランプ主義は米国政治により深く根を下ろそうとしており、今秋の大統領選挙でトランプ候補が勝利すれば、その影響力がさらに拡大することは不可避である。トランプ主義の実像を見極めることの必要性はますます高まっている。

 私はこの運動を理解するための第一歩は、米国の政治的伝統の中に位置づけることにあると考えている。既存の政治秩序の刷新を目指すトランプ主義は一見歴史から断絶した、突然変異のように見える。しかし、実際にはトランプ主義も数世紀にわたる米国の政治的潮流との強い継続性を持っている。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2024年9月号

genre : ニュース 政治 国際