ハリスの登場で戦略見直しは必要だが…
それはあたかも戴冠式を思わせる風景であった。
共和党全国大会の最終日、ドナルド・トランプ前大統領は指名受諾演説のため1時間半以上にわたり演壇に立ち続けた。それは、暗殺未遂事件からの健在ぶりを示すと同時に、共和党が名実ともに自分の党であることを誇示するものであった。
大会期間中、会場では赤い帽子を被った支持者が思い思いのプラカードを掲げながら、お祭りムードを盛り上げ、予備選を最後まで争ったニッキー・ヘイリー元国連大使を含め、かつてのライバルたちが次々と登壇し、新しい指導者への忠誠を誓った。その一方で、正副大統領経験者であるブッシュ、チェイニー、ペンスといった重鎮の不在は、党内における主役の交代を雄弁に物語っていた。
![](https://bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/e/b/1600wm/img_eb468156df3eeaf1a24c5fed1fe8b2c9453378.jpg)
改めて振り返ると、一人のアウトサイダーが率いる大衆運動が10年も経たない間に二大政党の一つを掌握したことは、米国の政治史上類を見ない出来事である。実際のところ、トランプ主義の台頭があまりに劇的であったため、我々はこの運動といかに向き合っていくべきか、明確な答えを見出せていない。米国国内でも教育程度の低い、烏合の衆と侮蔑的に捉える見方、自由民主主義への脅威として危険視する見方などが交錯し、実像は定まっていない。
そうした中で、共和党大会で見られたとおり、トランプ主義は米国政治により深く根を下ろそうとしており、今秋の大統領選挙でトランプ候補が勝利すれば、その影響力がさらに拡大することは不可避である。トランプ主義の実像を見極めることの必要性はますます高まっている。
私はこの運動を理解するための第一歩は、米国の政治的伝統の中に位置づけることにあると考えている。既存の政治秩序の刷新を目指すトランプ主義は一見歴史から断絶した、突然変異のように見える。しかし、実際にはトランプ主義も数世紀にわたる米国の政治的潮流との強い継続性を持っている。
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source : 文藝春秋 2024年9月号