いかなる対価を支払ってでも、人質解放を望んでいる
去年10月7日にパレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム教スンナ派武装集団ハマスがイスラエルを襲撃し、イスラエル市民ら約1200人を殺害した。この際、ハマスは200人以上を捕らえて人質にした。イスラエルは、ハマスを標的にテロリスト掃討を目的とした軍事作戦をガザで展開している。
筆者は、この事件以降、頻繁に通信アプリでイスラエルの友人たちと連絡をとっているが、6月に入ってから友人たちの緊迫感がそれまでと位相を異にすると感じるようになった。こういうときには現地に入って、空気を吸ってみることが何よりも重要だ。だから7月4日〜6日、イスラエルのテルアビブに出張した。2泊4日(機中1泊)の強行軍だったが、それに見合う成果があった。
ここで筆者のイスラエルとの関係について記しておきたい。
筆者は外務省で対ロシア外交を担当していた。その過程で、イスラエルのモサド(諜報特務庁)と特別の関係ができた。1997年11月に東シベリアのクラスノヤルスクで橋本龍太郎首相とロシアのエリツィン大統領が非公式に会談し、「東京宣言に基づき、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」という合意を口頭で行った。
平和条約を締結する前提は北方領土問題の解決だ。20世紀中に北方領土問題を解決するという熱気が首相官邸と外務省を覆った。
当時、筆者は外務省国際情報局(現在の国際情報統括官組織)分析第一課に勤務していた。国際情報局は諸外国のインテリジェンス機関との外務省における窓口だ。この業務を通じて、筆者は1996年〜99年にモサドの東京機関長(ステーション・チーフ)をつとめていたイスラエル・グリーン氏(外交官としての擬装は在日イスラエル大使館参事官、本稿における肩書きはすべてその出来事が起きた時点のものとする)ととても親しい関係になった。
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source : 文藝春秋 2024年9月号