ヒトという動物について考えた
読んでいる間ずっと、人間のことを考えていた。いや、人間というより「ヒト」という「動物」のことを考えていた。
ところで、「動物」という言い方は、いつどこで生まれたんだろう。古代エジプトには動物という言葉はなく、ネコとかワニとかそれぞれを表す呼び名しかなかったという記述を読んだことがある。
いずれにしろそれは、「人間と動物」あるいは「人間以外の動物」という使われ方をした時、動物と呼ばれるものをじっぱひとからげにして、しかも人間と動物の間にひとつの線をひいてしまう言葉だ。とても便利で危うい言葉。
だからこそ、言っておかなくてはいけないだろう。この本は、その境目を強化しようという本ではなく、ましてや、人間目線の面白雑学本などでは断じてない。
ここでいきなりだけど、約400年前にさかのぼる。デカルトという哲学者がいた。「我思う、ゆえに我あり」で有名だ。彼は、「動物は話せない。話せないものは〈考える〉ということはできない。本能のみ。つまり動物は、魂のない〈物体〉である」と言ったのだ。その認識はその後も脈々と引き継がれ、なんと近代までその尾を引いている。それに異を唱えるように盛んになってきたのが、動物行動学であり、動物にも言語と呼べるものがあるのではないかという研究である。
本書もその一冊であり、中でも「社会性」という側面をテーマにしているところが興味深い。原題は「The Social Lives of Animals(動物の社会生活)」。
言うまでもなくヒトも社会的動物だ。しかも地球上のあらゆる生命は、同じ生命(起点)から進化分岐してきたというのだから、皆どこか地続きである。
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