偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム
★四代目桂米丸
落語家の四代目桂米丸(かつらよねまる、本名・須川勇)は、新作落語を演じて、90歳を超えてもファンを笑わせ続けた。
五代目古今亭今輔に、弟子入りをお願いに行った日のことを、米丸は繰り返し語った。米丸が「一生懸命やります」と頭を下げると、今輔は厳しい表情になり、「一生懸命だけじゃダメなんです」と言う。その上で、「私の言うことを守ってくれれば、3年で食べていけるようにしてあげます」と保証してくれた。
1925(大正14)年、横浜市に生まれる。父親は港湾労働者の元締め須川組の二代目で、米丸は三男だった。小学校2年のころ、父がもっていた落語のレコードを聴いて「寿限無」を覚え、教室で披露して評判になった。
旧制中学を卒業して旧制都立化学工業専門学校(現・都立大)に進んだころには、ネタは30近くに増えていた。恐る恐る父親に「実は、落語家になりたいんです」と切り出すと、察していたらしく「援助はできないぞ」といっただけで許してくれた。
いっぽう、師匠の今輔はなかなかうるさかった。「当面は食えないから職をもちなさい」というので米丸は郵便局で働くが2日で辞めてしまう。それでも稽古は始まったが「あなたは最初から新作で始めなさい」と言われて新作の『バスガール』に取り組み、2カ月過ぎたころに古今亭今児の名をもらった。その後、不安になり「古典をやらなくてよいのですか」と聞くと「40歳まで新作でいきなさい」というだけだった。
しかし、関西の演芸場で稽古を繰り返した新作を披露したところ評判になる。喜んだ今輔の師匠の二代目桂小文治が「米丸にしてやりいな」と助言してくれ、49(昭和24)年、桂米丸を襲名して真打に昇進した。デビューしてまだ3年だった。
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source : 文藝春秋 2024年10月号