事件の核心「P3C疑惑」はなぜ封印されたか
ロッキード事件が発生して50年がたつ。日本の総理大臣・田中角栄に対し、米国政府の軍部・情報機関と深いつながりのある米国の航空機メーカー、ロッキード社から1973年から74年にかけて合計5億円が提供された事件は、戦後最大の疑獄と呼ばれる。
旅客機トライスターを全日本空輸に、そして、対潜哨戒機P3Cを海上自衛隊に、それぞれ購入してもらうのが、ロッキード社の狙いだった。しかし、日本の司法によって賄賂の趣旨と認定されたのは、前者、トライスターのみ。政府首脳らへの賄賂だというのに、その趣旨から政府購入のP3Cは除外された。当時は米ソ冷戦の真っ最中。日本列島へのP3Cの大量配備は、ソ連の原子力潜水艦の脅威に対抗する米国の極東戦略にとって欠くべからざるピースだった。そして、ロッキード社から日本に流れた裏金のうち20億円超の最終的な行方は今も不明だ。
「P3C関係のやつは聴くなという、それが唯一の、尋問について私どもが受けておった命令です」
在米大使館の外交官として田中首相の訪米に立ち会い、東京地検特捜部検事としてロッキード事件の捜査と公判に携わった堀田力さんがこのほど、事件記者歴を通算して80年以上となる2人のインタビューに応じ、P3C疑惑をめぐる捜査の舞台裏の新事実を語った。
「だいたい尋問事項にそういう制限すること自体が検察の姿勢としてはおかしいと思うんですが、それは政治的な、やはり理由があって……」
P3C疑惑の追及はなぜ、だれによって止められたのか。東京地検特捜部をも従わせることのできるそのだれかは、P3C疑惑の詳細が明るみに出るのをなぜそれほどまでに恐れたのか。後述するように、その疑問の先には、日米のいびつな関係の狭間で起きたロッキード事件の闇の深さが口を開けているように筆者(奥山、村山)には感じられる。
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