実際の誘拐事件を下敷きに描く人のいびつさ
東京オリンピックの開催を1年後に控えた1963年。北海道の礼文島から、ひとりの青年が東京、山谷にやってくる。頭の回転は鈍いが空き巣の常習犯である彼、宇野寛治が、たまたま空き巣に入った家で殺人事件が起きる。刑事の落合昌夫はその殺人事件を追ううち、子どもにまで莫迦(ばか)呼ばわりされる北海道なまりの青年の存在にたどり着く。しかし本当の事件が起きるのはこの先だ。
山谷にほど近い浅草で誘拐事件が起きる。誘拐されたのは豆腐店の小学校1年生の息子。犯人から豆腐店に電話があり、50万円を用意しろと言う。――1963年、台東区での男児誘拐事件といえば、戦後最大の誘拐事件と呼ばれた「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐事件」を思い浮かべる人も多いだろう。この小説もその事件を下敷きにしつつ、まったく異なる「小説」に仕立て上げている。
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source : 文藝春秋 2019年10月号