第三次AIブームは、ChatGPTの登場以来、「生成AIブーム」として、一旦は忘れられかけていたシンギュラリティ仮説を再燃させ、その期待と不安を過剰に膨らませた。それが株式市場にも反映されて、マグニフィセント・セヴンと称される企業の株価を高騰させたが、今年8月初旬の暴落で、一旦仕切り直しの観がある。
中長期的に、AIが産業構造を大きく変化させることは間違いないであろうし、NVIDIAの一人勝ち状態が続くかどうかはともかく、半導体の需要は増加し続けるであろう。しかし、私はこの間、汎用AIというのは、そう簡単には実現しないのではないか、という印象を強くした。
その理由の一つは、市場があまりに短気だからであり、この傾向は、強まることこそあれ、逆はなさそうである。
今し方述べた通り、AIの対社会的なインパクトは疑問の余地がないが、しかし、幾ら何でも、ほんの数ヶ月で莫大な利益を上げるほど単純な話ではあるまい、というのは、一種、常識的な発想であろう。ところが市場はそうではなく、アップルもNVIDIAも好決算であったはずなのに、株価はその後、大きく値下がりし、「AIバブル崩壊」とまで騒がれた。
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source : 文藝春秋 2024年12月号