平野　お久しぶりです。7年ほど前に私の新書『自由のこれから』の対談では直接お会いできましたが、現在、上田さんはサバティカル（研究休暇）でオックスフォード大にいらっしゃるので、本日はオンラインですね。

　上田　そうなんです。いまはイギリスで研究していますが、日本での講演に呼ばれたりもするので、二国間を行き来しています。

　平野　時差で睡眠時間が不規則になりませんか？

　上田　行ったり来たりしたら、どうなるか、自分の身体を使って実験しています（笑）。でも、ヨーロッパはいいです。6時に起きれば日本は14時ですから、昼頃には日本とのやり取りが終えられます。より人間的な朝型生活を送っています。

　近未来の日本を舞台に、事故で死んだ母をAIで蘇らせる主人公を描いた小説『本心』で、平野啓一郎氏は改めて「人間とは何か」を探究した。

　東京大学大学院教授の上田泰己氏は、世界的に活躍する睡眠研究の第一人者。その成果を初めての単著『脳は眠りで大進化する』にまとめた。研究の出発点には、幼少期に抱いた「生命とは何か」という問いがある。

　根源的な問いを原点に持つ両氏が芸術と科学について、それぞれの視座から語り合った。

生成AIは意識を創造できるか

　平野　上田さんの本には、睡眠は単なる休息ではなく、アクティブな活動でもあることが書かれていて、大変啓発されました。会うたびに上田さんは研究をアップデートしている。そのことに敬服します。

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