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成田悠輔「東大五月祭をぶっ壊す」――編集部員が選ぶ“今年の名言 2024”

Part2

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2024年に「文藝春秋 電子版」に掲載された記事の中から、編集部員がとくに心を掴まれた「イチ押しの言葉」を紹介します。

成田悠輔「東大五月祭をぶっ壊す」

(2024年8月号、「もっと対立や嫌悪を 東京大学五月祭講演録」

 

 

構内では反対派による妨害活動が起こり、開始が30分以上も遅れた成田さんによる東京大学五月祭での特別講演。マイクを握って言い放った最初の一言です。N党をもじった台詞とは裏腹に、講演内容は「日本の高等教育」を論じる建設的なもの。東大生に「悪魔になれ」と喝破する異色の講演録をお愉しみください。(編集部・山下覚)

芝山幹郎「旧世界に捧げる挽歌のような映画は残ってほしいな」

(2025年1月号、芝山幹郎×森直人「2024年は俳優の当たり年 年忘れ映画ベスト10」

 

 

映画評論家の芝山幹郎さんと森直人さんが2024年の映画ベスト10を選ぶ対談企画で飛び出した一言です。
ここで「旧世界に捧げる挽歌のような映画」と言われているのは、マイケル・マン監督がエンツォ・フェラーリを描いた『フェラーリ』とショーン・ダーキン監督が実在のプロレスラー一家を題材とした『アイアンクロー』。いずれも男臭い映画で、今風に言えば、支配と抑圧をもたらす装置として批判される家父長制にしがみつき、そのしがらみに懊悩する男たちの哀愁を描いています。そのため森さんは対談で「こういう映画って減っていくと思うんですよね」と指摘。芝山さんの「一言」はそれを受けての発言です。若い頃から「滅びゆくもの」に心を惹かれてきた私は、それを聞いて心の中で深く頷いてしまいました。
絶滅危惧種の「男たちの挽歌」を今後も撮ってくれそうなのは、香港で映画を作り続けるジョニー・トー監督。そう言えば、2024年には、「漢の絆セレクション」(「漢」と書いて「おとこ」!)と題して彼の4作品を上映するレトロスペクティブが開催されていました。中国共産党に歯向かって干されている、宍戸錠の生まれ変わりアンソニー・ウォンと組んで、今しか出来ない「挽歌」を作ってほしいものです。(編集部・波多野)

大根仁「『血だけ抜く』という考え方が僕にはしっくりくるんです」 

(2024年11月号、大根仁×新庄耕「『地面師たち』日本発の大勝負」

 

 

ネットフリックス「地面師たち」の原作者である新庄耕氏と、監督の大根仁氏の対談より。大根監督いわく、映像製作に関して『羅生門』の脚本家・橋本忍氏の「原作の姿形はどうでもいい。欲しいのは生き血だけ」という姿勢がしっくりくるとか。新庄氏はドラマが原作のトーンと違って戸惑ったそうですが、監督の強い意志からお任せされたそうです。結果、素晴らしいキャスティングやウイスキーマニア垂涎のハリソンルームなどが生まれました。原作と映像は世界観がうまくいかないこともありますが、これは見事なコラボ。映像化が困難な作品が日本のみならず、世界的なヒットとなったのも納得でした。(編集部・倉林)

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

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