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「すぐに燃え尽きて灰になってしまいます」成田悠輔さんが明かした“人生を乗り切る”方法

編集部日記 vol.26

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「体力もやる気もないですし、同じことを継続できる気力も集中力もない。そのうえ興味の幅が広すぎるので、ふつうの競争で勝ち抜くのは無理なんです」

 最新1月号の特集「私が大切にしている10のこと」では、一流の実業家やアスリート、学者の方々が成功するための知恵を明かしてくれています。テレビからファッション誌、そして浅草演芸ホールまで神出鬼没、本を書けばたちまちベストセラーの成田悠輔さんにも、その活動の秘訣を聞きました。

 持ち前の頭脳を活かし、口を開けば鋭いコメントを連発する成田さん。どうやって他の追随を許さない存在となったのか? インタビューで明かしてくれたのは、意外な“生存戦略”でした。 

「あまり仕事をしない」「生活習慣は整えない」……そして冒頭の発言のように、成田さんは「何を諦めて、何に集中するか」についてとても意識的です。なかでも、「一つの場所に居つづけない」というトピックは、それ以前に実際に目にした成田さんのお姿ともリンクして、とても腑に落ちました。成田さんは自分の肉体的、精神的な“弱さ”をよくご存じなのです。

 初めて成田さんに直接お会いしたのは、2022年7月8日に行われたオンライン番組配信のことでした。奇しくも、その日は安倍晋三元首相が奈良市で銃撃を受け、命を落とした日。

 編集部は騒然とし、何人かの部員は奈良へと急行していました。対談相手の先崎彰容さんはいつも少し早めに会場に到着されるのですが、この日は控室でもどこか落ち着かない様子。

 テロ事件の経過を伝えるテレビ報道を横目に、慌ただしくウェビナーの設営をしていると、時刻はあっという間に開始10分前に。私が最も焦ったのはこのときです。

 成田さんが来ない!

 オンライン番組の出演者の方には、基本的に「開始30分前」には文藝春秋本館に来てもらうことになっています。約束の時間を過ぎても成田さんの姿は現場になく、このままでは19時からの生配信に間に合いません。

 失礼を承知で何度も携帯を鳴らすと、スマホの画面には「着きました」というショートメッセージが。走って迎えに行くと、成田さんは弊社の正門前にお一人で立っていました。

 生配信開始まであと5分。狼狽える私を前に、成田さんは「こういうのはぶっつけ本番がいちばん盛り上がりますからね」と事もなげに言うのでした。

 挨拶らしい挨拶もできずに、そのままオンライン番組の生配信はスタート。結果、その夜の配信は、成田さんと先崎さんとの鍔迫り合いのような議論が展開され、文藝春秋ウェビナー屈指の盛り上がりとなりました(対談の模様はこちらからご覧ください)。

 対談の面白さに気を取られていたのか、成田さんが帰宅するための車の手配をすっかり失念していた私。車が到着するまで、しばらく時間がかかることを成田さんにお伝えすると、優しく「電車で帰りますから、(車を呼ばなくても)大丈夫ですよ」と言って、颯爽と文藝春秋を後にされたのでした。

「私が大切にしている10のこと」のインタビューで、成田さんは場所だけではなく、仕事のジャンルや「つるむ」人々も決して固定しないことを「一つの場所に居つづけない」という言葉で表現しています。つねに移動をしていることで、何者かがよく分からない謎の人物となり、結果として誰にも似ていない存在になる。

 ウェビナーで嵐のようにやってきて、去っていた成田さんの後ろ姿を思い出しながら、どこかの「界隈」に属さないことの価値を教えてもらったような気がします。

 ぜひ「文藝春秋」最新号で、謎の多い「成田悠輔」の片鱗に触れてみてください。

(編集部・山下)

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ビジネス ウェビナー 働き方 ライフスタイル