立原正秋が好んだ滋賀・長浜「鳥新」の鴨鍋

第21回

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70年以上手入れを欠かしていない鉄鍋も美味しさの秘訣。鴨鍋(1人前13,750円 2人前から 要予約)の最後は餅を入れ、雑炊でしめる

立原正秋 Ⓒ文藝春秋

 〈鴨のあかい肉と白い脂に、野菜の彩りがきれいだった〉(『春の鐘』新潮社)

 食通で知られる立原正秋は、琵琶湖北長浜の名店「鳥新」の鴨鍋を好み、作品にも登場させている。

 天保5(1834)年創業の鳥新では、天然の真鴨のみを使用。鴨のガラでとっただし汁に、地元でとれた新鮮な野菜を入れ、少量の砂糖と醬油で味を調える。野菜の上に、抱き身と呼ばれる鴨の胸肉を並べ、ほんのりピンク色に変われば食べごろ。

「うちの鴨鍋は、軟骨をなた包丁で時間をかけてすり身状にし、山椒を加えた『たたき』を入れるのが特徴です。だしが出て、肉の味が引き立ちます。鴨鍋は11月中旬から3月下旬限定で、寒い方が脂のノリがよく、野菜の甘味も増すのでおすすめです」(六代目店主・伊藤新一郎さん)

 

趣のある店内には立原が詠んだ俳句も飾られている。「近江の秋 逃げつ隠れつ 鴨消えにけり」

鳥新

滋賀県長浜市南呉服町9-17

☎0749-62-0501

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source : 文藝春秋 2025年2月号

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