ひきこもりの高齢化は社会全体の大問題だ
内閣府の調査で、40歳から64歳のひきこもりが全国に61万3000人いる、という推計値が明らかになりました。中高年を対象にした国の調査はこれが初めてです。
しかし私の推定では、この2倍はいるはずです。日本全国には200万人以上のひきこもりがいて、その半数が中高年だと確信しています。
ひきこもりの高齢化は、生活保護や年金制度を圧迫し、孤独死を激増させるなど、大きな影響を及ぼします。本人や家族に限らず、社会全体にとって切実な問題なのです。
3月末、内閣府は初めて行なった「中高年のひきこもり」に関する調査結果を発表した。40〜64歳の男女5000人を、全国から無作為に選んで訪問。回答を得た3248人(65.0%)中、47人(1.45%)がひきこもりに該当したため、全人口で推計して61万3000人という数字が出た。そのうち76.6%が男性。年齢の内訳は40代38.3%、50代36.2%、60〜64歳25.5%。ひきこもっている期間は5年以上が約半数。中でも、10年を超える人は29.7%を占めた。
筑波大学の斎藤環教授(社会精神保健学)は、精神科医として、30年前から不登校やひきこもりの問題に関わってきた。1998年の『社会的ひきこもり――終わらない思春期』以来、関連著書も多数ある。
根本匠・厚生労働大臣は「大人のひきこもりは新しい社会的問題だ」と語りましたが、いささか見当違いな発言です。私は20年も前から、ひきこもりの高齢化が大変な事態をもたらすと警鐘を鳴らしています。
ひきこもりは世間体が悪いので、質問用紙を各家庭に配布して回収するアンケート形式の調査で、率直に回答してもらえる可能性は低い。したがって、結果は常に控えめに出るのですが、それでも61万3000人というのは大変な人数です。
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source : 文藝春秋 2019年6月号