高橋是清(たかはしこれきよ)(1854―1936)は江戸の芝生まれ。波乱万丈の青春時代を送った末、大蔵省、日銀の要職を歴任し、日本の財政、金融政策をリードする。大蔵大臣の椅子にも前後7回座り、数度の経済危機を乗り切った。政友会総裁として総理大臣にもなったが、政権担当者としては失敗。しかし、独特の風貌から「ダルマ」のあだ名で国民の人気は高かった。「二・二六事件」で反乱軍により惨殺される。
是彰氏は四男。昭和天皇の同級生だった。
若い頃は、オヤジも相当メチャクチャなことをしたようですね。アメリカに渡って奴隷にされたという話は有名ですが、他にも酒を浴びるほど飲んだり、ペルーの銀山に投資して失敗したり……。
このペルー銀山の話は、後に母がよく話していました。借金の払いに家屋敷を全部売り払って、同じ町内の長屋に引っ越したんです。ところがそれでも、長屋に毎晩のように友達を呼んで酒盛りをする。ちょうどその頃、母は私の姉をみごもっていたんですが、「おい、酒がないぞ」と言われて、大きなお腹をかかえて酒を買いにやらせられる。「あんなきまり悪いことはなかった」とこぼしてました。
ただ私が生まれた頃は、もう日銀の副総裁になっておりまして、子供心にもずいぶん厳格な父親でしたね。お酒も晩酌にお銚子1本か2本。歳とってからは、ワインをグラスに一杯だけ、でした。
「ダルマ」というあだ名は、顔の形とヒゲからついたんでしょう。当時、漫画家が、達磨を描けばオヤジの顔になるというのでそんなあだ名がついた。実はあのあごヒゲは、私がずいぶん刈ってやってたんですよ。湯殿の鏡の前の椅子に座ってヒゲを刈らせるんですが、それ用の小さなバリカンがありましてね、イギリス製だったかな、それで短く刈りそろえるんです。鼻の下は、自分でハサミをつかって一生懸命、形を作ってました。
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source : 文藝春秋 1989年9月号