日本を震撼させた平成の凶悪事件。事件後に流れた歳月は犯人・遺族の心境にどのような変化をもたらすのか。ノンフィクションライター、小野一光氏が現場を歩く。今回は「平成18年 秋田児童連続殺人事件」篇の第3回(全4回。第1回、第2回から読む)。
「あれから17年はあっという間ですね。地元では最近は事件の話はなんにも出ない。でも、出ないんですけど、あのへんの川について知ってる人は、いまでも変わらずに(Aちゃんの殺害現場は)大沢橋じゃないと思ってます。事件が起きた2006年の春は、川の水位が非常に低くてですね、あそこから流れて、(遺体発見現場である高岩橋の下流に)ふつうに辿り着くことはありえないんです」
23年8月にそう語るのは、長年にわたり秋田県藤里町の藤琴川で釣りをしてきたX氏である。ちなみにX氏は、この地域に在住する地元の名士であることを付け加えておく。
06年4月から5月にかけて、藤里町で小学4年生のAちゃん(当時9)と、近隣に住む小学1年生のBくん(当時7)が殺害された「秋田児童連続殺人事件」。
Aちゃんの母で犯人の畠山鈴香(逮捕時33)には、08年3月に秋田地裁で無期懲役の判決が下され、その後、控訴審を経て09年5月に同判決が確定している。鈴香は現在、福島刑務支所で服役中だ。
「大沢橋が殺害現場なら全身が傷だらけになるはず」
X氏は鈴香が娘のAちゃんを大沢橋から落としたと自供していることに対し、遺体発見現場である高岩橋下流の中洲まで、普通の状態では辿り着かないと、かねてより主張している。8年前である15年にX氏を取材した際にも、次のように話していた。
「警察の主張する大沢橋からだと、遺体発見現場までの間に、4カ所の浅い場所があるんです。遺体発見現場は浅い5カ所目。だから先の4カ所を通り抜けたとすると、服は汚れて靴は脱げ、全身が傷だらけになるはず」
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