臨床心理学者・東畑開人さんと歴史学者・與那覇潤さんによる「デイケア」をめぐる対談。#2では東畑さんが「ケアに効率化を求めることの危うさ」を、與那覇さんは離職前の大学教員の経験から得た「組織としての大学のダメさ」について熱く、冷静な対話が繰り広げられました。

臨床心理学者・東畑開人さん(右)と歴史学者・與那覇潤さん(左) ©山元茂樹/文藝春秋

(全2回の2回目  #1より続く

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なぜデイケアはアサイラム(収容所)化してしまうのか?

與那覇 東畑さんは、デイケアは本来アジール(避難所)であるべきだと。人々が従来縛られてきた前提から解放されて、ちょっと新しい自由を見つける場所のはずなのに、それがアサイラム(収容所)化してしまう点を問題にされています。

 要は医療保険から落ちるお金を最大化するために、ケアの内実は二の次にして、いかに効率よく患者を集め・閉じ込め・よそのクリニックに逃がさないかだけに熱心になる。ご著書の末尾ではその犯人探しが、ミステリー調で語られていますね。

東畑 この問題は深刻です。税金を使うとか、投資を受けるとかいう時には、どうしても説明責任が生じてくる。そのお金が適正に使用されたかがチェックされますから。だけど、「居る」とかケアの価値って、本当に説明しにくいんです。