“関係性萌え”とフジテレビの“内輪感”は全然違う
――ヒャダインさんが番組を見る上で、好きな番組に共通するようなものはありますか?
見る基準として出演者が楽しそうな番組がぼくは一番好きなんですよ。『スクール革命』って演者同士が仲いいですよね。『クレイジージャーニー』も、あの3人(松本人志、小池栄子、設楽統)が仲良さそうっていう。“関係性萌え”というか、殺伐とした世の中で、フェイクだらけの中でもリアルがあるというのが好きなので、リアルとして演者同士が仲がいいものが好きですね。
――ただタレントを並べたんじゃダメなんですよね。
とりあえず演者をいっぱいだしておいた方がいいだろうってやった典型だったのがフジが大幅改変した時(2014年)に始まった『クイズ30』。要するに毎週30人の芸能人を呼んで、クイズをする番組。それでなぜかゴールデンボンバーの「女々しくて」をみんなで踊るっていう、地獄のような……(笑)。それを見て本当にズレているなと思って。お金がないなりに必死でやっている番組がウケている時代に、なんで限りある予算をタレントに回して内容を疎かにしているんだよという本末転倒甚だしいあの感じが、もはや哀れでしたね。
――それも昔のフジのメソッドという感じですもんね。
そうですよね。それこそ「ものまね歌合戦」や「隠し芸大会」みたいに人をわーっと呼んで。もちろん『爆笑ヒットパレード』みたいに呼んだことによっていいという番組もありますけど、フジのお家芸とはいえ、いまの時代に合っていない感じがすごいするんですよね。
あとフジテレビの番組に感じるのは、特に情報番組の“内輪感”のヒドさですね。『ノンストップ!』はまだ外を向いている感じがありますけど、他の番組は、こっちを置いてけぼりにして、見た目がキレイな子たちとキャリアのあるおじさんが“わいわいキャッキャッ”して、「○○ちゃん、××だよねぇ」「そうなんですよ~」で「次のニュースでーす」と。知らねーよ!(笑)
――アッハッハッハ、ホントですよねえ。先ほど、仲の良さを感じる番組が好きだとおっしゃっていましたけど、それと内輪感の違いは?
“関係性萌え”のぼくからして嫌なのが、それをコンテンツとして全面に押し出しているからだと思うんですよ。それは極めて腐女子と似た感覚だと思っているんですけど、「ないところに探す」のがちょうどいい。あるものをないように見せているけど、実際はあるというのを探すのがちょうどよくて、それを「はい、仲良し。はい、ファミリーです」みたいな感じを出されると、引くわーとなる。え、こっちは一人だけど、と(笑)。寂しいってなるんですよ。
いまのフジテレビのキャッチフレーズって、「フジテレbe with you」なんですよ。そして夕方のニュースが『“みんなの”ニュース』、夜のニュースが『“ユア”タイム』。押しつけがスゴいんですよ。あんなにこっちを一人ぼっちにさせているのに(笑)。だからフジの戦法の発想として、“わいわいキャッキャッ”やって楽しそうにファミリー感を出していたら、見ている人も親しみを持ってファミリー感を感じてくれるだろうと思っているかもしれないんですけど、それがどんズべっているんですよね。全然入っていけない。クラスで1軍の人たちと先生が“わいキャッ”しているところに入っていけないじゃないですか。「いいなー、先生とも仲がいいんだねぇ……」という孤独感があるんですよね。
――あぁ(笑)。よく分かります。
根本的な原因というのが、フジが日テレの『笑コラ』とか『月曜から夜ふかし』の成功を見て、民間とマスメディアの垣根を取っ払わなければいけないということにまず気づいたと思うんですよ。そこまではまだいいんですけど、「民間」と「マスメディア」と言っている時点で上から目線なんですよね。「我々マスメディア様」が降りてやっているぞという感がひしひしと伝わってくるんですよ。君たちのレベルまで合わせてあげました。ぼくたちはあなたたちの味方です。気持ちがよくわかりますよ。ほら、こんなに下までへりくだりましたよ、と。そういう時点でバレますよね。
――そうですよね。視聴者を舐めている感じが透けて見えるから、逆に舐められるみたいな。
そうなんですよ。特権意識がある人たちがへりくだったものを作ったところでリアルじゃないし、面白くもないし、鼻につく。校長先生が卒業式で「ヘビーローテーション」を踊る感じ(笑)。「ぼくは若い人たちが好きなものが大好きなんだ。AKB48とかいいよね」みたいな。「ぱるちゃんとかいいね」とか言って、「先生、ぱるるです」みたいな(笑)。そういうムリクリ感があるんですよね。今の時代ってネットが普及したせいか妙に視聴者もプライドが高くなっていて、舐めた嘘をつかれるのが一番嫌いなんですよね。