文春オンライン

2017/02/15

『モテキ』の次に自主映画『恋の渦』を撮った理由

――大根監督は、先ほど燃え殻さんに「2作目が大事」とおっしゃられました。監督は、たくさんのドラマや映画を手がけられてきたわけですが、世間的に広くお名前が知れ渡った作品は、やはり『モテキ』だったと思います。本作は、もちろん大根監督にとっての1作目ではありませんが、大ヒット作の次に作る作品って、やはり重要だし、いろいろ覚悟もあったのではないでしょうか。監督が『モテキ』の後に、「次、大事だぞ」という気持ちで臨んだ作品は何だったのですか?

大根 『モテキ』の次に撮ったのは自主映画『恋の渦』です。

燃え殻 メチャクチャいいですよね。でも、あれって低予算な作品でしたよね?

大根 超低予算(笑)。『モテキ』の後にいろいろな企画が来たんですけど、どれもつまんないから断っていたんです。そんな時に、映画監督・プロデューサーで、映画塾「シネマ☆インパクト」を主宰する山本政志さんから、ワークショップの一環で、経験の少ない若い役者たちを使って短編映画を作る仕事を依頼されました。山本監督のことは高校生の時に大好きだったので、喜んでお引き受けしました。でも、ワークショップで短編映画を撮るという企画自体はありふれていて、面白くない。なので「短編はもう深夜ドラマで散々やってきたから、長いものを撮らせて欲しい」とお願いしたんです。そして、前からやってみたかった『恋の渦』という、劇団「ポツドール」の三浦大輔くんの作品を提案しました。

燃え殻 あれは名作ですよ。

大根 ちょっと計算もありましたけどね。『モテキ』がヒットして、それなりに評価も頂いたので、そのままメジャーの階段を登っていく道もあったかもしれないけど……あえて世間の予想外のことをやってやろう、と。

燃え殻 いったん、成功者のレールから外れてみたわけですね。

大根 はい。深夜ドラマをやっていた頃に戻った感じでしたね。

燃え殻 僕、あの作品を見た時に「大根さん、いい人だなぁ」と思った。ブレないというか、やっぱ「俺の大根監督だ!」と。『モテキ』の後に、普通この作品は選ばないでしょう。

大根 映画版『モテキ』を撮った時に、サブカルとかルサンチマン的なものを題材にして、しかもメジャーで作品を作るということに対して、いわゆるサブカルクソ野郎たちから少なからざるdisがあったわけですよ。「サブカルとルサンチマンは俺たちの専売特許だろ!」的な(笑)。

燃え殻 そんな感じはありましたね。でも、あの作品のエンディングにスチャダラパー&小沢健二の「今夜はブギー・バック」使っちゃうところとか、すごいなと思いました。あの曲って「これを使うかどうか?」という、サブカル界における一種の踏み絵になっているところがある。それを、屈託なく使ってしまったところに痺れました。大根さんは、サブカルというものを、1回サラにしようとしているのかもしれない、と思ったんですよね。で、実際そうなった。

大根 その意識はたぶんありました。でも、言ってしまえば、そもそもすでにサラになっていたじゃないですか。サブカルの象徴みたいな店「ヴィレッジヴァンガード」があれだけの大規模チェーンになって、しまいには巨額の赤字を出してニュースにまでなった。つまりサブカルは「俺だけが知っている感」を武器に、すでにメジャーになっていたわけです。だったら、商業映画のエンディングにあの曲かけて何か問題が? と思うんですよね。

燃え殻 でも、あの作品を見て、「テン年代のサブカル」を引き受ける覚悟のようなものを感じましたよ。