がんや認知症との関係を示す研究結果も
ビタミンD不足の悪影響はそれにとどまりません。国立がん研究センターを中心とする研究グループが全国3万4千人を対象にした住民研究のデータを抽出し、血中ビタミンD濃度を4分位に分けて解析したところ、血中濃度が2番目に高いグループは、最も低いグループに比べ、何らかのがんになるリスクが25%低いという結果でした(国立がん研究センター「血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクについて」)。
また、血中ビタミンD濃度が1番高いグループは22%、3番目に高いグループは19%リスクが低下しており、部位別にみると肝がんのリスクが統計的に有意に低下していました。つまり、逆に言うと、血中ビタミンD濃度が低すぎる人は、何らかのがんになるリスクが高くなるのです。
それだけでなく、ビタミンDが不足すると認知症になりやすいという研究結果もあります。米国の研究グループが認知症のない65歳以上の高齢者1658人を平均6年間追跡したところ、血中のビタミンD濃度が正常な人に比べ、低値の人は認知症発症リスクが53%増大し、重度に不足している人は125%増大していました(American Academy of Neurology: Link Between Vitamin D and Dementia Risk Confirmed)。
このようにビタミンD不足が続くと、ボディーブローのように体にダメージが蓄積する恐れがあります。これから冬至(今年は12月22日)に向けて、ますます日照時間が短くなります。血中ビタミンD濃度が下がりやすい季節であることを意識して、できるだけ外に出るよう心掛けましょう。
ビタミンDの摂り過ぎにも要注意!
なお、ビタミンDは摂り過ぎると高カルシウム血症になり、腎機能障害や食欲不振、嘔吐、神経の興奮性亢進といった副作用を起こす恐れがあります。ですから、できるだけバランスのいい食事から摂るよう心がけ、サプリメントを飲む場合も用量用法を守ってください。骨粗しょう症でビタミンD製剤などの処方を受けている場合も、医師の指導を守るようにしてください(公益財団法人長寿科学振興財団「ビタミンDの働きと1日の摂取量」)。
また、日光を浴びることは大切ですが、全身性エリテマトーデスなどの病気の人や、ケトプロフェンという成分を含む湿布薬、一部の抗生物質、抗てんかん薬、抗がん剤などの薬を使っている人は、日光過敏症(日光アレルギー)になる恐れがありますので、この場合も医師の指導を守って対策を取るようにしてください。