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連載昭和事件史

2020/01/31

明瞭な会計制度の確立、興行時間の改正、利権の絡む相撲茶屋撤廃

(1)    協会の会計制度を確立されたい

 全くこの膨大な組織体たる相撲協会ぐらい奇妙で因習的な会計制度を持ったものは日本にも稀有であろう。どれだけの収入があってどれだけ支出しているのであるか。責任のある収支の報告がかつて出されたことがない。一切の不明瞭がこの会計のやり方のあいまいさに端を発している。

(2)    興行時間を改正されたい

 大人数の力士が一つ土俵の上で入れ代わり立ち代わり相撲をとるのだから、朝暗いうちから前相撲を始め、午後5時半ごろに至って打ち出す方式はやむを得ない段取りとも思えるけれども、相撲が真に世間大衆のものだとするならば、そこに時間の改正を行う必要が確かにある。勤労者の方々のためも考えて、せめて夏分だけでも夜間興行(ナイター)をやってみてはどうであろうか?

(3)    入場料を低下して大衆の相撲であらしめたい

 現行の入場料金は決して高すぎはしないと当局者は言うが、最低料金たる大衆席は遠くてすし詰めで便所へも行けないと嘆いている半面、桝席の高価は確かに法外。しかも、その桝席はほとんど茶屋の独占に任せてある。金があってお義理やごちそうで見物する人々が桝席で見て、本当に相撲を見たいと思う人々が全く国技館から締め出しをくっている。このように不合理な入場方法を墨守している興行物は、おそらく地球上のどの国にも存在しないだろう。大衆のために全場内を開放すべきである

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(4)    相撲茶屋を撤廃されたい

 相撲見物不純化の親玉が茶屋制度である。会計制度のあいまいさと相まって、協会の内部に深く食い入っているのだから、なかなかこれを撤廃するという英断がとりにくい。一個の利権に対する給付として、茶屋が桝席を壟断している。場外には入場できなくて弱っているご見物衆がたくさんあるのに、桝席はいつも悠々閑々、そして割り振りの狂った切符が闇屋の手に渡って法外な値段を生んでいる。癌腫をまず切開しなければ生命は保てない

(5)    年寄制度を漸次に廃止されたい

 この“年寄”というのも奇怪な存在である。年寄でなくては力士の養成ができない。力士は親方(年寄)を通じて協会の構成員になっていると当局はうまいことを言って、力士の収入の低下を理論づけている。年寄は何もしないで、協会から相当の分け前金をもらっている。この制度がなくなれば、相撲界の金銭関係はもっとスッキリするし、力士の公式収入もぐっと増えていく。長いしきたりだから、明日すぐこれを廃止することは困難であろう。だから“漸次”とうたったわけである

(6)    養老金制度を確立されたい

 力士が長年の間、汗水垂らして働いて、一朝けがでもして土俵を去るようになると、幕内力士で5000円(いまは30万円、ほかに力士会から30万円)=当時の5000円は2017年の貨幣価値で約1000万円=の養老金(退職金)では何もできっこない。そこで昔は堂々たるお関取が牛肉屋の下足番をするという事態も持ち上がる。ほかにヘンな方面へ支出される金がウンとあるのだから、養老資金だけは世間の会社・銀行並みに張り込むべきである

(7)    地方巡業制度を根本的に改められたい

 協会巡業部の年寄連中は地方巡業の一切を切り盛りする。その方法は全て出先親方連中と地方顔役(勧進元)との秘密契約で取り行われ、力士の立場の弱さは全くお話にならない。相撲不条理の縮図の1つがこの巡業制度である