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 我々の研究グループは、東京大学医科学研究所の井元清哉教授たちと協力し、その14倍にあたる113人の感染を見落とし、入国を許したという研究結果を発表した。

 飛行機だろうが、船舶だろうが、潜伏期がある以上、状況は同じだ。大航海時代なら兎も角、現代の検疫には限界がある。

 社会状況が変われば、検疫の在り方も変わらねばならない。この点を知りたい方は海事代理士関家一樹氏の文章をお奨めする(http://medg.jp/mt/?p=9419)。

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 関家氏によると、国際社会は検疫と人権尊重・健康の維持の両立に苦心しているそうだ。2007年に発効した国際保健規則においては、32条で「参加諸国は旅行者をその尊厳、人権及び基本的自由を尊重して扱い、且つ、かかる措置に伴う不快感や苦痛を最小限に抑えなければならない」として過剰な検疫に対しての警告を示している。

イタリアでは「12時間後に乗客は解放されている」

 今回の新型コロナウイルスの流行においては、地中海のクルーズ船「コスタ・スメラルダ」(総トン数18万5,010トン)で、乗客に発症が確認され6,000人強の乗客乗員が一時足止めされるという事件が発生している。

 イタリア政府の対応は日本とは全く違った。2名の感染者について処置をした後、12時間で乗客は解放された。

 なぜ、イタリアと日本はこんなに違うのだろう。私は経験の差だと思う。

 検疫を意味するquarantineは、イタリア語のヴェネツィア方言quarantenaおよびquaranta giorni (40日間の意)を語源とする。

 1347年の黒死病(ペスト)大流行以来、疫病がオリエントから来た船より広がることに気づいたヴェネツィア共和国が、船内に感染者がいないことを確認するため、疫病の潜伏期間に等しい40日間、疑わしい船をヴェネツィアやラグーサ港外に強制的に停泊させたことに始まるらしい。

 クルーズ船は、英船舶会社P&Oが1844年にサウサンプトン発着の地中海クルーズを開始したのに始まる。大手海運会社の閑散期の経営対策として、19世紀から20世紀にかけて発達した。

 アガサ・クリスティーの『海上の悲劇』は地中海クルーズ船を舞台とし、名探偵ポワロが殺人事件を解決する。

 かくの如く、クルーズ船は西欧で発達した文化だ。これまでにも麻疹、レジオネラ菌、赤痢、髄膜炎菌、さらにノロウイルスなどの集団感染を繰り返し経験し、試行錯誤を繰り返してきた。特にイタリアからは複数の医学論文が発表されている。経験の蓄積において日本とは彼我の差がある。

ダイヤモンド・プリンセス号のテラスに出て携帯電話で通話を試みる乗客ら ©AFLO

ダイヤモンド・プリンセス号の検疫は史上最大

 関家氏が注目するのは、長い船舶検疫の歴史の中で、ダイヤモンド・プリンセス号の検疫は史上最大のものであることだ。ダイヤモンド・プリンセス号は総トン数11万5,875トン、戦艦大和(総トン数6万5000トン)の2倍だ。