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 かつては性転換をしているキャストはほぼいなかった。豊満な乳房もなく、男性器はそのままのスタッフばかりだった。

 しかし、時代は変わり、たわわな乳房を誇り、男性器は手術によって切除され、整形手術の進歩によって美形キャストが増えたことで、コミカルなショーから妖艶でセクシーなもの中心に様変わりをしていく。

 時代に応じて、柔軟な発想とともに経営スタイルを変化させ、スタッフたちの努力と工夫によって、半世紀にわたって厳しい競争を勝ち抜き、「白い部屋」は名店であり続けたのだった。

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「私たちはショーにすべてをかけているんです」

 冒頭に掲げたフジテレビ『ザ・ノンフィクション』「切なさに生きて…2丁目」は、コンチママのインタビューからはじまり、続いて「白い部屋」の振付師である安河内ゆう子が紹介される。

 番組放送当時65歳だった安河内は、かつて日本のショー文化を支えた日劇ダンシングチームのメンバーのひとりだった。そして、コンチママとの出会いから「白い部屋」のショーの振り付けを担当するようになって、すでに30年が経過した。

写真提供/白い部屋

「白い部屋」の名物であるショーは、3カ月に一度のペースで内容が一新される。オープン以来、これまでに200を超える演目を上演してきた。

 舞台に上がるスタッフのなかに、ダンス経験者はほとんどいない。それぞれの運動センスや経験によってダンスの指導をし、全体のバランスを見ながら演出を考えた後に、コンチママとともに、ショーの完成度を高めていく。

 いわば、コンチママと安河内との共同作業によって、ショーのクオリティは保たれているのである。「白い部屋」のオフィシャルサイトには「新宿2丁目の楽しみ方」と題されたコラムコーナーがある。そのなかにある、「コンチママが語る、白い部屋のショーの魅力とは。」(2019年2月8日付)から、ショーにかけるコンチママの意気込みがわかる個所を引用したい。

 《振付の先生といろんな話をして、マンネリ化しないように工夫していますね。

 先生を二人にして、新しい空気を入れるようにしています。ショーをずっと考えていると、どうしてもキャストの子にパターンができてくるんですね。

「この子にはこういういい面があるからこれを伸ばしましょう」とか、「この子はこれは無理だからやめておきましょう」だとか。でもそういう固定観念を取っていかなければ絶対伸びていかないよね、と。できないことをさせることもその子のためにいいんじゃないかということで、新たな挑戦をさせているところです。

 私は自分がお客様になったつもりで、観客の立場で見るんですね。

「ここはつまんない」、「ここは良くないな」とか、その意見を振付の先生に伝えます。振付の先生は目いっぱい振り付けて、自分のやりたいことを出していくじゃないですか。私は「そこじゃないよ」と、「お客様はこういうところが見たいんじゃない」と提案するんですよ。

 そこは絶対、先生にはっきり言ってるんですよ。

 先生も私の意見を取り入れてくれます。

「それをやったらおかしいんじゃない」とぶつかる時もありますよ。

 でも、「それでやってください」と通すこともあります。》

 コンチママは言う。

 ──私たちはショーにすべてをかけています。