トランプ米国大統領の投稿に対し、ツイッターが警告表示を行い、世界中でニュースになった。一方、国内では木村花さんの死去以来、「中傷投稿の積極的な警告、削除を行うべき」という声が高まっている。ツイッタージャパンの社長・笹本裕氏に聞いた。
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Q. 木村花さん死去、トランプ暴言問題……ツイッターは日本とアメリカで警告の基準が違うの?
<トランプ大統領のツイートへの警告はインパクトが大きかった。そこで「ツイートの警告や削除に対して、日米で基準が違うのでは?」という疑問の声があります。しかしツイッタージャパンやぼくが独自の巨大な権限を持っているということはありません。グローバルで統一されたルールがあるのです>@yusasamoto
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トランプ大統領の「when the looting starts, the shooting starts(略奪が始まれば、発砲が始まる)」という投稿に対し、ツイッターでは警告を行いました。
実はこの警告表示は、昨年7月に発表した機能なんですね。
ツイッターはルールやポリシーに違反するものには厳然として対応します。一方で、アメリカの大統領をはじめ、その人の発言内容を知ることに公共的な価値がある場合があります。そういった場合にはツイートを削除してしまうのではなく、ルール違反であるという解説をつけて、ツイートを残すことを決めました。
警告で「いいね」「返信」「リツイート」ができなくなる
トランプ大統領の当該ツイートは、“暴力の賛美”に関するポリシーに違反しています。本来であれば削除を求めるべきですが、大統領の発言には実効力が伴います。つまり何らかの暴力行為に発展する可能性が、他の発言者とは比較できないほど高いわけです。
ですから、ツイートには「公共性があると判断したため、引き続き表示できます」という旨の解説を添えてツイッター上に残しています。「表示する」をタップすると、投稿内容が見られる仕組みです。
ただしこのツイートへの関与は制限されています。コメントを付けてリツイートすることはできますが、「いいね」、「返信」、「リツイート」はできないようになっています。
ツイッターにとって、公共の場での会話を提供するということには、「誰もが自分にとって大切なことを自由に話せるようにする」ということも含まれているんですね。それは政治家や政府高官が関わる際、すごく重要な意味を持つことがあります。
コロナ危機でも顕著になりましたが、各国のリーダーたちの発言は議論を巻き起こし、物議を醸し、時には危害を加える力として働く可能性すらあります。ぼくらは、ツイッターにおいて、ユーザーが自分たちの国のリーダーに対してオープンに意見を述べたり、説明責任を問うたりできる場を提供することはとても重要なことだと考えているんです。
ですからルールに違反するツイートであっても、公共の利益に照らして閲覧を認める「警告表示」という機能を作ったのです。